ここからサイト内共通メニュー

ここから本文です。

特集 東川町

1
 「写真の町」として全国的に知られ、移住者が増えている町でもある東川町。ここで、オリンピック・パラリンピックのメダリストのトレーニングもサポートしている企業であるR-bodyとの共同事業により、2021年度から「コンディショニングを通じた健康なまちづくり」を推進している。2023年にはスポーツ庁と早稲田大学の研究チームによる共同研究によって、その効果が実証された。また、2023年10月には町民の交流や活動、健康づくりの拠点として「東川町共生プラザそらいろ」(以下「そらいろ」と言う。)がオープン。町民が利用しやすいトレーニング環境を体現し、全国の自治体から視察が相次いでいる。

オリンピックメダリストがつないだ縁 

1
 東川町は、旭川市の南東に位置する人口約8,600人のまち。大雪山系の森林資源と水資源に恵まれ、基幹産業は米作などの農業。「写真の町」として全国に知られ、移住促進にも力を入れており、北海道内の町村では数少ない人口が増加している町である。
 R-bodyと共同で行う「コンディショニングを通じた健康なまちづくり」は、ソチオリンピックスノーボードアルペン銀メダリスト・竹内智香選手との縁から始まる。竹内選手は旭川市出身で、実家は東川町の旭岳温泉で旅館を経営しており、幼少期は東川町のスキー場でトレーニングをしていた。東川町の人に自身の経験を還元したいという思いから、ジュニア選手育成プログラムを東川町で実施するなど関わりを持っている。
 一方、2020年ころから、東川町の前松岡市郎町長が「健康の町 東川町」をスローガンに掲げ、政策を推進しようとしていた。そこで竹内選手に相談したところ、選手時代から現在の育成プロジェクトまでサポートしているR-bodyを紹介された。
 R-bodyは東京に本社を持ち、スポーツ・健康施設の運営やアスリートのトレーニングなどの事業を展開している。その中で提唱しているのが「コンディショニング」である。会社名の「R-body」は「Re-body」、身体を再生することを意味する。そのためにはコンディション(体調)を良くすることが必須であるという前提のもと、ただ運動するだけでなく身体についての知識を学び、身体の課題の解決方法を習得できるよう、アスリートから一般市民までサービスを提供している。アスリートが成果を出す「ハイパフォーマンス」から、一般市民が生活や仕事を快適にこなせるようになる「ライフパフォーマンス」への展開を標榜し、自社事業のほかさまざまな企業や自治体との共同事業を展開している。

町民の健康づくりのため共同事業を開始

1
 松岡前町長と菊地伸現町長(2023年3月31日より現職、当時東川町東川スタイル課長)は、早速東京にあるR-bodyの施設を見学。鈴木岳. 代表とビジョンを共有し、「これを東川町で広げてほしい」と、事業の計画を進めた。企業とパートナーシップを構築して社会価値の共創を目指す「東川オフィシャルパートナー制度」の一環としてR-bodyと連携し、健康なまちづくり事業を2021年7月にスタートした。
 R-body からはコンディショニングコーチの中島秀雪氏と小野寺未来氏が派遣され東川町に常駐。当初は教育委員会生涯学習推進課に所属し、町の体育施設として活用されていた東川町B&G海洋センターを拠点に活動を開始。また、町民の健康づくりに関わるため、保健福祉課とも連携しながら事業が進められた。

 東川町は人口が増えてはいるが、65歳以上の人口は33.2%(2020年)と全道平均と同程度。そのため、中高年層を想定して肩こりや腰痛の解消や、姿勢改善、怪我予防などを目的とした「コンディショニング講座」を展開した。
 講座は40分間のグループ形式で、コーチの中島氏や小野寺氏が講師となり、テーマに合った運動をすると共に、その運動が身体のどのような仕組みに作用するか講義しながら進めるというもの。活動当初はB&G海洋センターを会場として企画、町民に告知したが、コロナ禍の影響もあり、集まっても数人、時には参加者ゼロという日もあった。
 そこで、中島氏と小野寺氏は町内の企業や学校などに交渉し、出張でコンディショニング講座を実施。実際に体験して体調の改善やスポーツのパフォーマンス向上といった効果を実感した人が、B&G海洋センターでの講座にも通うようになり、約半年ほどでほぼ定員に近い参加者が集まるようになった。B&G海洋センターの利用者は月平均の延人数150人ほどだったところ、1年間で2倍、2年間で3.5倍にまで増えた。
 

 

子どものうちから健康な身体づくりを

1
 この事業は、高齢者など特定の対象者に絞るのではなく、広く町民全体を対象としている。その目的について中島氏に聞いた。
 「高齢の方は、『骨折して寝たきりになりたくない』『いつまでも自分の足で歩きたい』など目的があるので運動の講座などに参加する方も多いです。一方、私たち現役世代は、ちょっと腰痛や頭痛があっても病院に行くほどではないと、症状を抱えながら生活しています。さらにお子さんはそういった症状もないので、問題意識が起きにくいのです。そして、高齢になって問題が起こってから運動の大切さに気づきます。現役世代や子どものころから定期的な運動をする教育を受けていたら、健康で怪我をしない身体が作れるわけです。それが本当の健康なまちづくりになると考えています。
 私たちが開催する講座に全世代が参加していただくのが理想ですが、実際の参加者は50から60歳代の女性の方が多いです。そのため、小学校の体育の授業に月1回程度導入していただいたり、職場に伺って仕事の合間に行い、幅広い年齢層の方々に生活の一部に取り入れていただけるようにしています」。





町民が訪れやすい施設がオープン

1
  さらに、2023年10月に「そらいろ」がオープン。町民が集う居場所として、健康づくりルーム、子どもの遊び場、交流ラウンジなどから成る複合施設である。コンディショニング講座の会場やトレーニング施設は2階に作られた。
 R-bodyとの共同事業の開始当初から、鈴木代表は「東京のようにさまざまな施設がある場所では目立たないかもしれないが、地域においてはフラッグシップとなる施設ができると『素敵な施設ができた』『その施設に行くと健康について学べる』など興味を持って訪れる人が増える」とアドバイスしていた。そのころ、複合施設建設の計画がすでに進んでおり、健康づくりの拠点をそこに加えることになった。
 計画を進める上で、保健福祉課の佐々木英樹課長が東京のR-bodyの施設を見学。20年間にわたってノウハウが蓄積され作り上げられた施設を見学し、配置や建材などを再現して東川町に建設することになった。特徴的なのは、施設内に仕切りが少なく、壁面もガラス張りになっている部分が多いところ。その理由について中島氏はこう話す。
 「日本のフィットネス人口は全体の3%程度と言われていて、トレーニングは一般の方から見ると大変とか、ハードルが高いという印象があります。ここは、外や施設内の別の空間からも運動している様子が分かり、入りやすくなっていると思います。それと、いかにもジムという感じではなく、カフェのようなおしゃれな設えもハードルを下げるポイントです」。
 また、トレーニングスペースではマシンを置くスペースを最小限にし、ストレッチなどができる空間を確保したことも特徴的である。
 そして、施設建設と同時に、コンディショニングコーチの中島氏と小野寺氏は保健福祉課に新設されたライフパフォーマンス室に配属となり、施設を拠点として引き続き住民の健康づくりに当たっている。
 

町民が効果を実感、研究で成果を実証

1
 コンディショニング講座の参加人数は、2 年半で延人数15,000人、実人数は1,200人。人口8,600人のうち約14%に当たる。参加した人からは、肩こりや腰痛、膝痛などの不調が改善されたという声が多い。さらに、「マッサージに頼らなくてもよくなった」「体力がついた」「農作業の際にも体力がもつようになった」という声も聞かれた。
 もう一つの成果として、保健福祉課そらいろ推進室の中村あさ子室長は、「以前は、このような交流の場所や介護予防教室に男性が参加することは少なかったのですが、そらいろができてからは、男性が一人で来られるようになったことが、一番の目に見える変化だと思います」と手応えを話す。
 また、スポーツ庁の「Sports in Life 推進プロジェクト」における「コンディショニングに関する研究(2)運動器機能低下に対する地域における効果的な運動療法の在り方に関する研究」(以下「研究」と言う。)の一環として、腰痛予防プログラムを20234月から3カ月間、東川町民を対象に実施した。スポーツ庁では、東京オリンピック・パラリンピック大会で行ったR-bodyのコンディショニングを国内の地域に広める取り組みを進めており、この研究はその一環として早稲田大学の金原恒治教授を中心とする研究チームと共同で進められたもの。調査対象となった住民は76人、平均年齢51歳、男性20人女性56人。
 成果として、継続率が88%と高く、その要因は「一緒にやっている人がいる」「顔見知りのトレーナー」「決まった時間に行われており習慣化できる」「効果が感じられた」などであった。労働生産性の自己評価は78%から85%に向上、腰痛のある人は22人から15人、痛みの程度の指標は3.6から1.6に減った。終了後に試験を行った結果、バランス能力は16点から20点に、運動機能の評価は33点から38点に上がった。
 2024年2月にはそらいろでスポーツ庁室伏広治長官、金原教授、R-bodyの鈴木代表が登壇して報告会も開催され、多数の町民が聴講に集まり関心の高さを伺わせた。

 


 

健康づくり事業の成果を他地域にも

 事業の成果について、そらいろ推進室の中村室長は「そらいろは、全世代交流、活躍、健康の3つのコンセプトで作られています。東川町は居住年数25年未満の移住者が半数以上います。コンディショニング講座も、もともとの町民と移住者が交流するきっかけの一つになっています。先ほどお話ししたように男性の方が利用してくれたり、冬にも高齢者が歩いてきてくれるなど手応えを感じており、もっと多くの方に来ていただけるようにしたいと思います」と意欲を見せる。
 中島氏は成果が出た要因について、「東川町の職員の皆さんは、“予算がない”“前例がない”“他でやっていない”の3つの“ない”はないという考え方を軸にさまざまな取り組みを推進されております。できない理由を言わずどうしたらできるかを考える姿勢で私たちの活動をサポートしてくださったことが、事業を実現・継続できた要因だと思います。今後は、町民の方がコンディショニングを自分たちで意識してできるようになったり、町民が町民に教えられるようになって、さらに広がるようにしたいと思います」と話す。
 これらの事業は全国の自治体から関心を集め、視察も多く訪れている。道内の奈井江町からも町で取り入れたいという申し出があり、当初は中島氏と小野寺氏が出向いて講座を行っていた。継続に当たり、奈井江町では地域おこし協力隊としてトレーナーを雇用。R-bodyの人材育成のカリキュラムを導入している札幌の専門学校の卒業生で、コンディショニングのノウハウを身に付けていたため、中島氏と小野寺氏もフォローしながら同様のプログラムを展開している。
 「専門学校でトレーニングを学んだ人の就職先は、運動施設や病院、介護施設などでした。そこに自治体で健康なまちづくりをするという選択肢が入るのはとても良いですね」と、中島氏は期待を寄せる。R-bodyのノウハウと東川町の新しいことに挑戦する風土によってコンディショニングが浸透して生まれた成果と言えるが、今後は全国の自治体への広がりの可能性が垣間見える。
1

 


『そらいろ』施設内のようす

お問い合わせ

事業振興課

本文ここまで

ここからフッターメニュー

ページの先頭へ戻る