時流
2035年問題
小樽商科大学 商学部企業法学科教授 片桐由喜
『北海道のこくほ』読者諸氏なら、2025年問題とは何かをすでにご存じであろう。2025年の今年、約800万人いる全ての団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上となり、その結果、彼らを含む後期高齢者は国民の2割を占める。これで世の中うまく回れば、問題はなく、むしろ喜ばしい長寿社会、ニッポンである。
しかし、現在、どのメディアも声高に報道するように、高齢者の医療や介護の需要が増える一方で、それに応えるだけのサービスが足りない。とりわけ、マンパワー不足が深刻で、これが2025年問題の代表格である。
一方、大学の世界ではその10年先である2035年に大きな問題を抱えている。周知のとおり、少子高齢化は進行が止まらない。2035年には2023年比で18歳人口が全国で約13万人、北海道では7,820人減少すると予想されている。今年、北海道の18歳成人人口は41,500人なので、減少数はこの2割弱に相当する。大学進学率は年々、上昇しているが、それでも、絶対数の減少に追いつかず、2035年以降、定員割れの大学が増え、大学の統合、閉鎖が取りざたされているし、そもそも既に始まっている。
では、これの何が問題なのか? 第1に受験者が定員を下回ることにより生じる質の低下である。第2に第1の問題を避けるために入学定員を減らすと大学の教職員定員も減らさざるを得ず、彼ら(もちろん私を含む)の労働条件の引下げや人員抑制などである。第3に大学の消失が与える所在地域への経済的ダメージである。
所管官庁の文科省はみずからの存在意義をかけて、問題を検討し、解決策を論じている。いろいろ言う中に18歳人口を埋める代替人員として留学生と社会人を掲げる。しかし、聞くところによると、最近のアジアの留学生は東大でなければアメリカの大学へ行くらしい。かつて、多くの留学生を送り出していたアジア諸国の若者は今、日本を勉強する場所として選んでいない。
社会人を大学へ呼び込む仕組みについては、近年、リカレント教育、リスキリング教育(以下、リカレント教育等)が提唱されている。これらは、仕事で求められる新しい知識、技術を提供し、学修者の能力を伸ばし、彼らのキャリアのステップアップに資する教育である。ところで、従来型の社会人教育にカルチャーセンター等で提供されてきた生涯学習がある。「紫式部を読む」、あるいは、「大人のピアノ教室」のたぐいである。これらは職務直結型教育というよりは、教養を深め、人生を豊かにするためのものであり、リカレント教育等などとは区別される。
諸外国ではかなり活発な上記リカレント教育等であるが、日本ではなかなか普及しない。その理由の主たるものはこれら教育を受けたとしても職場内での処遇に結びつかないこと、長時間労働、長時間通勤ゆえに学ぶ時間がないこと、さらにはキャリアアップに資すると考える教育プログラムがまだ十分に開発されていないことがある。
老いも若きも、どこを向いても問題山積である。もっとも、問題のない世の中になってしまうと私たちの脳が退化するから、こうした試練が人類の成長のために常に与えられているのかもしれない、と思う年初である。
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