時流
人口減少地域の医療・介護サービスの課題と改善策
北海道大学名誉教授 前沢政次
医療・介護の経営が厳しい。収入は利用者減や報酬改定の伸び悩みなどで減少が続く中、人件費は増加、必要経費は物価上昇のあおりを受け高騰している。
人口減少の著しい過疎地域は一層その傾向が強い。
特に介護サービスが崩壊の危機にある。介護スタッフ不足ばかりでなく、高齢者人口がピークを過ぎ、減少傾向にある地域では、入所者も減少している。当然、収支バランスが崩れ、運営が厳しくなる。
このような状況下にあっても、見事に役割を果たしている施設もある。施設の理念・目的が分かりやすく明確であり、幹部の先見力、中堅リーダーの指導力が優れており、地域住民との交流などが活発であることがその特徴である。しかし、若手の介護職員はメンタルに問題を抱えたり、経済的理由で離職に悩むことは少なくない。小さい自治体の将来が見えなければ、若者は町を出ていかざるを得ない。他の地域から人を引き寄せることも難しい。
打開策はなかなか見当たらないが、優れた施設と弱体化しつつある施設との経営協力や人事交流などの手段はとれないか。都市部の施設と過疎地の施設間で協約を結び、若い時に過疎地で働き、施設が縮小されるときには都会の施設で指導的役割を果たすなど可能になると先行きは明るくなるであろう。それには地域の人々とのあたたかな交流なども寄与する。
過疎地には利点もある。小さい町村であれば横のつながりがよいことである。都市部のサービスの多くは縦割りで、連携がよろしくない場合もまだまだ存在する。
医療はどうであろうか。広域でのネットワークづくりを進める地域が出てきている。地域医療連携推進法人が組織されつつある。しかし、全国的に広がるのはまだまだ時間がかかる。
ではいま地域でやりがいの持てる課題は何であろうか。少なくても二つの課題がある。認知症の方々への地域ケアの充実と住み慣れた地域での看取りの場所づくりである。
認知症地域ケアでは人権の尊重、その人の想いに沿い、その人のネットワークを大事にすること、人間対人間の交流を深めることなどである。在宅では虐待予防、入院では身体拘束の最小化も課題である。
故郷で命を全うしたい、できれば自宅でと考える人は少なくない。しかし現実は医療機関のダウンサイジング、入院ベッドを持たない無床診療所化など、入院での看取りが先細りになりつつある。
一方で在宅介護はひとり暮らし、老々介護、認々介護、ケアラー側の病気、障害など問題が山積している。看取りの場所は介護系の施設を利用することも望まれている。ここにも医療と介護の連携が必須である。
人口急減地域における医療介護サービスの今後の課題は、空間的ばかりでなく精神的居場所づくり、その人が望む死に場所の選択、人と人とのつながりづくりに集約できる。
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