時流
愛しきミトコンドリアを元気にする
北海道千歳リハビリテーション大学 特任教授 森 満
私はペットとして犬を飼っていたことはあるが、期間としては数年で短い。しかし、私たち人間を構成しているすべての細胞は、1個当たり平均で1000~2000のミトコンドリアという小器官を細胞内に、あたかもペットのように飼っている。もともとミトコンドリアは酸素を利用できる細菌であったが、約20億年前に地球の大気の酸素が増加するにつれて勢力を拡大し、古細菌の原核細胞内に入り込み、人間を含む多細胞生物の細胞内に入り込んで小器官としての地位を確立した。ミトコンドリアは独自のDNAを持っていて、核のDNAとは異なり、母親のミトコンドリアDNAからのみ受け継がれるという母系遺伝をしている。
ミトコンドリアは、人間の活動のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を製造する役割を担っており、エネルギー工場と呼ばれる。また、ATPはエネルギー通貨とも呼ばれるが、その原料はブドウ糖や脂質(脂肪酸)という栄養素である。製造されたATPが分解される過程でエネルギーが放出され、人間はそのエネルギーを利用して活動している。
ミトコンドリアがいろいろなストレスにさらされて元気でなくなることが、病気の発生につながるという「安保 徹, 免疫力はミトコンドリアであげる. 人はなぜ病気になるのか. 三和書籍, 2020年」。逆に、ミトコンドリアを元気にしてあげると、病気を遠ざけて健康に過ごすことができ、また、老化を遅らせる働きもするという。ミトコンドリアを元気にする方法としては、①野菜や果物を摂取すること、②日光に当たること、③有酸素運動をすること、などがある。
野菜や果物に多く含まれるカリウム40という元素は、通常のカリウム39よりも中性子が1つ多いという同位体で、微量の放射線を放出しながら崩壊し、最終的にカルシウムに変わる。放射線というと人体に悪影響を及ぼすイメージが強いが、カリウム40が放出する放射線はミトコンドリア内の電子伝達系に作用してATPの産生を活性化する。野菜や果物を食べるとさわやかな気分になるのはそのためである、と安保氏はいう。
また、日光に当たると紫外線に曝されるが、紫外線もミトコンドリア内の電子伝達系に作用してATPの産生を活性化する。紫外線は皮膚がんのリスクを高めると言われているが、日本人などのアジア人は白人に比べてその影響は少ない、と安保氏はいう。
有酸素運動は、ジョギング、ウォーキング、エアロビクスといった、ゆったりとして、酸素を多く体内に取り込む運動である。有酸素運動がミトコンドリアを元気にするメカニズムは、酸素がたくさん細胞内のミトコンドリアに届けられてATP産生を活性化することによる。有酸素運動の後に爽快な気分になるのはそのためである、と安保氏はいう。さらに、その際に脂質や糖質が利用されて、血糖値や血中脂肪値が下がることも、体によい影響を与える。
日ごろから、自分が飼っているミトコンドリアをペットのように愛しく思い、できる限り、野菜や果物を摂取し、日光に当たって、有酸素運動を行って、ミトコンドリアを元気にしてあげようではありませんか。
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