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北海道の国保 令和7年(2025年)7月号

ー 時流 ー

愛しきミトコンドリアを元気にする

北海道千歳リハビリテーション大学 特任教授 森  満 

 私はペットとして犬を飼っていたことはあるが、期間としては数年で短い。しかし、私たち人間を構成しているすべての細胞は、1個当たり平均で1000~2000のミトコンドリアという小器官を細胞内に、あたかもペットのように飼っている。もともとミトコンドリアは酸素を利用できる細菌であったが、約20億年前に地球の大気の酸素が増加するにつれて勢力を拡大し、古細菌の原核細胞内に入り込み、人間を含む多細胞生物の細胞内に入り込んで小器官としての地位を確立した。ミトコンドリアは独自のDNAを持っていて、核のDNAとは異なり、母親のミトコンドリアDNAからのみ受け継がれるという母系遺伝をしている。
 ミトコンドリアは、人間の活動のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を製造する役割を担っており、エネルギー工場と呼ばれる。また、ATPはエネルギー通貨とも呼ばれるが、その原料はブドウ糖や脂質(脂肪酸)という栄養素である。製造されたATPが分解される過程でエネルギーが放出され、人間はそのエネルギーを利用して活動している。
 ミトコンドリアがいろいろなストレスにさらされて元気でなくなることが、病気の発生につながるという「安保 徹, 免疫力はミトコンドリアであげる. 人はなぜ病気になるのか. 三和書籍, 2020年」。逆に、ミトコンドリアを元気にしてあげると、病気を遠ざけて健康に過ごすことができ、また、老化を遅らせる働きもするという。ミトコンドリアを元気にする方法としては、①野菜や果物を摂取すること、②日光に当たること、③有酸素運動をすること、などがある。
 野菜や果物に多く含まれるカリウム40という元素は、通常のカリウム39よりも中性子が1つ多いという同位体で、微量の放射線を放出しながら崩壊し、最終的にカルシウムに変わる。放射線というと人体に悪影響を及ぼすイメージが強いが、カリウム40が放出する放射線はミトコンドリア内の電子伝達系に作用してATPの産生を活性化する。野菜や果物を食べるとさわやかな気分になるのはそのためである、と安保氏はいう。
 また、日光に当たると紫外線に曝されるが、紫外線もミトコンドリア内の電子伝達系に作用してATPの産生を活性化する。紫外線は皮膚がんのリスクを高めると言われているが、日本人などのアジア人は白人に比べてその影響は少ない、と安保氏はいう。
 有酸素運動は、ジョギング、ウォーキング、エアロビクスといった、ゆったりとして、酸素を多く体内に取り込む運動である。有酸素運動がミトコンドリアを元気にするメカニズムは、酸素がたくさん細胞内のミトコンドリアに届けられてATP産生を活性化することによる。有酸素運動の後に爽快な気分になるのはそのためである、と安保氏はいう。さらに、その際に脂質や糖質が利用されて、血糖値や血中脂肪値が下がることも、体によい影響を与える。
 日ごろから、自分が飼っているミトコンドリアをペットのように愛しく思い、できる限り、野菜や果物を摂取し、日光に当たって、有酸素運動を行って、ミトコンドリアを元気にしてあげようではありませんか。


ー 涼風清談 ー

 喜茂別町は北海道南西部に位置し、国道230号・国道276号の2本の国道が交差する交通の要所であり、ニセコ・ヒラフ、ルスツなどのリゾートエリアをはじめ、札幌市、洞爺湖、新千歳空港からも車で90分圏内と恵まれた立地条件にあります。町の名の由来はアイヌ語で「キム・オ・ペツ(山の多い川)」から転化したもので、その名のとおり蝦夷富士と呼ばれる秀峰羊蹄山をはじめ、尻別岳などの山々に囲まれ、町内には清流尻別川を含む大小41の川が流れています。
 基幹産業は、恵まれた自然環境を生かした農業です。近年では、気候・風土に適合したメロンやトマトなどの作物も盛んでありますが、喜茂別町は日本における「アスパラガス栽培発祥の地」として知られており、アスパラガスは、まちの自慢の逸品です。また、中山峠の道の駅「望羊中山」では「あげいも」が人気を誇り、町の中心部にあります「郷の駅ホッときもべつ」では、地域の特産物を紹介しており、訪れるみなさまに大変喜ばれています。
 喜茂別町は人口1,900人ほどの小さな町です。わが町でも少子高齢化が進むなど様々な課題がありますが、これまで先人たちが築いてきたこの地を次の世代につなげるため、基幹産業である一次産業の農業、商工業、観光業の振興を図り「次の世代につなぐ、安心して暮らせるまちづくり」を目指しています。
 国民健康保険においては、令和7年5月末現在で421人、288世帯の加入で加入率は被保険者数で22.6%、世帯数で24.5%であり、令和6年度の特定健康診査受診率は37.8%となっております。国民健康保険事業につきましては、北海道が運営主体となり、資格・給付管理、保健事業は後志広域連合が、保険税の賦課・徴収を町が、それぞれ担っておりますが、「令和12年度を目途に保険税統一を目指す」とされていることから、統一に向けた保険税の在り方について、町国民健康保険審議会で慎重に議論いただくとともに、被保険者の健康増進と医療費削減のため、後志広域連合と連携し、特定健康診査及び特定保健指導の実施に努めてまいります。
 町民の健康増進につきましては、病気の予防や早期発見・早期治療につながる各種健康診断の受診勧奨に努めるとともに、町民が健康的な生活を送る力を育み、健康寿命の延伸に繋がるよう健康相談や健康教育に積極的に取り組んでまいります。また、地域活性化起業人制度を活用し、民間企業から人材の派遣を受け入れることにより、地域の健康課題の整理・分析から、多様な健康課題を抱える高齢者はもとより、現代世代に至るまで、様々なアプローチを通じて必要なサービスに接続できるよう、関係機関と連携した取り組みを進めてまいります。
 令和7年度は第7次喜茂別町総合計画の10年間の初年となることから、今後のまちづくりに向けた重要な一年となるものと考えております。第7次総合計画において基本構想に位置付けた基本姿勢では「子どもたちの幸せを大切にします。」「人と人とが寄り添いあい、お互いの個性を尊重し合う社会を築きます。」「次世代への責任を果たし、持続可能なまちをめざします。」「日々の暮らしで感じられる幸せを大切にします。」の4つの項目を、まちの未来像の実現にむけた方向性である基本計画は「子どもが豊かに育つ」「にぎわいが生まれる」「安心安全を備えた」「快適な自然環境で暮らせる」「変革の歩みを止めない」を喜茂別の実現に向けた5つの柱として取り組んでまいります。
 

 津別町は、北は北見市、南は阿寒摩周国立公園に隣接する北海道東部オホーツク圏の内陸部最南端に位置し、総面積716.80㎡のうち86%を占める山林と網走川源流の清らかな水を資源とした農業と林業のまちです。オホーツクの気候を生かした畑作三品(てん菜、小麦、馬鈴薯)や玉ねぎ、肉牛・酪農を中心とした農業のほか、林業関連分野においては、企業病院を抱える老舗の合板製造企業、オリンピック・パラリンピック東京2020大会のメダルケースの製造を行った企業、アイスクリームの木のへらを製造する国内唯一の企業、60年以上に渡り著名な弁当の箱(経木折り箱)を製造する企業など、特徴的で唯一無二の企業が精力的に活動しています。
 また、観光においても、摩周湖の雲海を一望できる津別峠の展望台や、道内唯一の「森林セラピー基地」、チップ(ヒメマス)やカラフトマリモが生息する秘境「チミケップ湖」など特徴的な観光資源を有しています。
 津別町の人口は令和7年5月末現在で3,922人、2,127世帯。うち国民健康保険加入者は965人、591世帯で、人口ベースで24.6%、世帯ベースで27.8%を占めます。
 津別町の人口減少率はオホーツク総合振興局管内で最も大きく、全国や道内の市町村と比較しても高い高齢化率と相まって急速な過疎化が進む状況にありますが、移住・定住・空き家の利活用に関するワンストップ窓口として、移住・定住ウェブサイト「チャレンジツベツ」の開設や北海道つべつまちづくり株式会社内にサポートデスクを設置するなどして新たなスタートを応援する体制の整備を進めてきました。近年は、そうした中から新たなまちづくりの芽も多く生まれ、「人」と「人」のつながりが生むまちの成長の姿に手応えを感じています。
 現在、津別町では、持続可能なコンパクトでにぎわいのあるまちなかを目指し平成27年度から進めてきた『まちなか再生事業』における役場庁舎を中心とした町民サービスゾーンと中心市街地のコミュニティゾーンの整備が完了し、役場庁舎(令和3年5月供用開始)、図書館・交通拠点・スーパーマーケットを複合したコミュニティ施設(大通棟、令和5年11月オープン)、ドラッグストア・北海道つべつまちづくり株式会社事務所を複合するコミュニティ施設(幸町棟、令和6年11月オープン)が完成したことで一つの節目を迎えました。消防庁舎(令和3年3月供用開始)の建て替えや学校給食センター(令和7年8月供用開始予定)の建て替えなどもあり、庁舎から見える展望も大きく様変わりしました。
 福祉分野では、町営から民間に経営移譲して10年を経過した特別養護老人ホームとデイサービスセンターについて、施設の老朽化に伴い、今後、移転新築が計画されていることから、町として支援を検討しています。

 令和6年3月に策定した『津別町国民健康保険第3期データヘルス計画・第4期特定健康診査等実施計画』においては、高血圧の重症化による心疾患が多い・糖尿病性腎症の増加・食生活や運動に課題があるということが明らかとなりました。特に、男性に肥満が多い・特定健診の受診率が低いことを健康課題として捉え、令和7年度からは、インセンティブを目的として特定健診3年連続受診者に商品券の配付を行うなど、新たな対策を講じることとしております。
 町民の皆様の健康寿命を延ばし、津別町で最後まで自分の望む生活が実現できるよう、これからも努めてまいります。
 

昨年6月に誕生した「日高山脈襟裳十勝国立公園」の太平洋側西部のすそ野に平取町は位置し、面積は743k㎡、85%が山林で、一級河川沙流川が町内を南北に還流しています。
 主たる産業は農林業で、とりわけトマトの生産では全国屈指の産地として、年間1万トン以上、販売額40億円を超え、地域団体商標に登録された「びらとりトマト」の名で、主に近畿地方や首都圏に出荷されています。
 また、当町ではアイヌ文化の振興に以前から取り組んでおり、地域に色濃く残るアイヌ文化の保存継承のため、伝統的生活空間イオルの再生事業を始めとした、伝承者などの人材育成や自然素材の確保のための事業を進めています。
 さて、本町の人口は令和7年3月末現在で4,377人、2,356世帯、国民健康保険の加入者は1,171人、705世帯となっております。加入率は被保険者数で26.8%、世帯数で29.9%となっており、65歳以上の加入者数は408人と加入者全体の34.8%を占めている状況です。
 町民が心身ともに健康で、毎日を生き生きと暮らせることがまちづくりの基本と捉え、平取町では令和6年度をスタートとする「第1期平取町健康増進計画」を策定し、健康寿命の延伸を目標に計画を推進していくことにしています。合わせて平取町国民健康保険第3期データヘルス計画及び第4期特定健康診査等実施計画を策定し、町民に血糖値の高い方が多く、糖尿病にかかる医療費の増加、糖尿病性腎症による医療費の増加に着目し、特定健診受診率の向上や生活習慣病重症化予防事業を強化することにしています。特に特定健診の受診率は全道平均より高い数値とはなっていますが、さらに高い数値目標を掲げ、その達成に向け担当スタッフはもとより、関係団体の協力を得ながら努力をしているところです。
 また、人は食べなければ生きてはいけません。古くから「医食同源」ともいわれ、言わずもがなバランスの取れた規則正しい食生活は健康に暮らすうえでの大切な条件となります。食は健康の基本という考えからも、町民の皆さんが食を通じ健康を考え、元気に暮らしていただくために、平取町では平成22年に「平取町食育推進計画」を策定し、現在は3期目となる計画に則した取り組みを進めています。
 地域密着型食育事業の一環として、平取高校のトマトクラブでは毎年、地元食材を使ったオリジナルのメニューを情報発信していますし、クラブ考案のレシピによるお弁当は地域の行事などでも提供されています。
 びらとりトマトをはじめとする野菜やびらとり和牛など、新鮮で栄養価の損なわれない地元食材を心がけて摂るようにすることで、健康を維持することや、地元を再発見するような機会にも繋がっていくと思っています。
 これからも町民が健康で、楽しく生きてゆくことができ、わが町の課題について話し合い、町の将来をみんなの力と連帯で創造することがまちづくりの究極の目標と位置づけ、各施策に取り組んでいきたいと考えています。
 トマトの町の町長ということでもないのですが、私は毎朝、トマトジュースを飲んでいます。これからの旬の時期は新鮮このうえない、果汁滴る完熟トマトを種が飛び出す勢いでかぶりつき、ある時は冷凍トマトをジューサーにかけたフレッシュジュースを朝の空の胃袋に流し込む。本当にうまい!これこそ、このトマトの町に住む人間の特権であり最大の健康法と決めつけ、小さな幸福感に浸っているのです。おいしいトマトを食べに一度おいでください。


 
 

 士幌町は、明治31年に岐阜県からの移住団により開拓の鍬がおろされ、大正10年に当時の音更村から分村し「川上村」が誕生し、昭和37年に「士幌町」となりました。十勝の北部に位置し、大雪山系から流れ出る音更川の両岸に広がる平坦な大地を中心として、西北部には東大雪山系の東ヌプカウシヌプリを最高峰とする山岳地帯、東部には佐倉山系の丘陵と居辺川の河岸段丘地帯があります。本町の面積の6割以上が農用地で、火山灰地からなる土壌、冷涼な気候に恵まれ、“農村ユートピア”建設という大きな夢を抱きつつ農業を基幹とした町づくりを進めています。
 町内には、自然豊かな「士幌高原ヌプカの里」や令和7年4月にリニューアルオープンした「しほろ温泉プラザ緑風」のほか、「道の駅ピア21しほろ」があります。道の駅では、しほろ牛を堪能できるレストランをはじめ、カフェではフライドポテト、ショップではソフトクリームなど町内の特産で作られたものであふれ、士幌町の農業の魅力を発信しています。
 本町の人口は令和7年7月末現在5,630人、2,735世帯。このうち国民健康保険の加入者は1,878人、884世帯で加入率は33.35%となっています。65歳以上の加入者は634人で加入者全体の33.75%を占めており、高齢化に加え医療の高度化等により一人当たりの医療費は増加傾向にあります。
 令和3年度から5か年計画とする「第6期町づくり総合計画(後期)」では、健康に対する意識づくりを促進するとともに、保健・医療・福祉を包括する「福祉村」を形成し、さらなる充実を目指しています。
 町内唯一の医療機関であり、「福祉村」の中核施設としての役割を担う士幌町国民健康保険病院では、平成30年に病床数を10床削減し50床に変更しましたが、医師・看護師等の医療スタッフ不足や医療の高度化、デジタル化といった経営環境の急激な変化など、今後も厳しい状況が見込まれています。継続して安定した医療を提供していくため、令和5年3月には「士幌町国民健康保険病院経営強化プラン」を策定し、町民の健康といのちを守り、信頼と安心のある病院づくりの実践に努めています。
 また、令和6年3月に策定した「士幌町国民健康保険第3期データヘルス計画及び第4期特定健康診査等実施計画」では、生活習慣病の早期発見、早期治療による重症化予防に加え、生活習慣や筋骨格系疾患予防による運動習慣づくりと健康意識向上を図るため、健康マイレージやスマホアプリを活用した「ウォークラリー」等を実施し取り組んでいます。
 士幌町は、先人が“農村ユートピア”を目指した地域のたゆまぬ努力とあふれる熱意により、困難を乗り越え未来への道を切り開いてきました。今後も地域の人、産業、資源を活かした「活力のある町」と、町民誰もが安心・安全、生きがいを実感できる「真に豊かな農村しほろ」を目指してまいります。


ー 特集 第28回北海道国保地域医療学会 ー
 北海道国民健康保険診療施設連絡協議会と本会主催の第28回北海道国保地域医療学会が6月14日、ホテルポールスター札幌で開かれた。今回のメインテーマは「ウェルビーイングを高める地域包括ケア・システム構築に向けて」。奈良県明日香村国民健康保険診療所の管理者・所長を務める武田以知郎氏が特別講演を行ったほか、ポスター発表やシンポジウムを通じ、道内各地から集まった国保診療施設関係者と市町村国保関係者等が「ウェルビーイング」をキーワードとして、北海道のより良い地域医療に向けて相互研鑽を深めた。
 開会にあたり、主催者を代表して北海道国民健康保険診療施設連絡協議会長の村上英之氏(足寄町国民健康保険病院院長)があいさつし、「地域の医療崩壊が危惧される中、地域医療を存続させるには、効率重視ではなく地域住民が求めるものに応えるため、多職種によるチーム医療の輪を広げていくことが大切」と述べた。来賓として、北海道保健福祉部健康安全局国保担当局長の宮森隆之氏、北海道国民健康保険診療施設開設者協議会長の硲一寿氏がそれぞれ祝辞を述べた。

 特別講演では武田以知郎氏が、映画『明日香に生きる』でも取り上げられた地域医療と在宅医療のあり方、現代の健康とウェルビーイングについての考え、総合診療医やコミュニティナースなどを活用した地域共生社会の方向性、「病を診る・人を診る・地域を診る」地域医療の今後の展望について語った。
 
ポスター発表では、雄武町国民健康保険病院長の秀毛寛己氏による『採血dataをみて……』を始め、5名が研究成果を披露した。
 
最後に行われたシンポジウムでは、北海道保健福祉部地域医療推進局地域医療課長の川上禎之氏が、地域包括ケア・システム構築に向けた北海道の取り組みを紹介。続いて北海道立羽幌病院副院長の佐々尾航氏、白老町立国民健康保険病院 病院経営監の西科純氏、合同会社Grace.I訪問看護ステーション恵代表社員・管理者の井形恵氏が、それぞれ地域での取り組み事例を発表した。

(以下、特別講演とシンポジウムの発表要旨、ポスター発表の発表者とテーマを掲載)

特別講演

へき地における地域医療の役割  

 2023年、私が40年にわたり歩んできた地域医療の道のりを描いたドキュメンタリー映画『明日香に生きる』が公開され、2024年には日本医師会の第12回「赤ひげ大賞」をいただき、一つの節目となる栄誉を頂戴した。私は自治医科大学を卒業後、奈良県のへき地の診療所に勤務し、以来ずっと地域医療に携わってきた。
 私たちの診療所がある明日香村は、歴史と自然が共存する風光明媚な土地である。私はよく、「診療所はコンビニのようでありたい」と話している。これは利便性の話ではなく、赤ちゃんからお年寄りまで、発熱や肩こり、指に棘が刺さったなど日常的な身近なニーズに応えるということ、そして、病院は特別なニーズに対応する百貨店的な医療機関であり、どちらも必要なもの、小さな診療所だからこそできる、顔の見える関係性を大切にした医療があると信じている。
 ここで私たちが掲げた診療所のスローガンは、「そうだ、診療所いこう」。これは単に病気を治す場所ではなく、困ったときに立ち寄れる「心の拠り所」でありたいという思いから。実際に、ペットロスや介護の悩み、認知症に対する不安など、さまざまな相談が寄せられる。私たちはそれらに真摯に向き合い、生活と人生の全体を支える「地域の保健室」のような役割を担っている。

映画の話と在宅医療

 映画『明日香に生きる』は、奈良県在住の溝渕雅幸監督から、明日香村の住民の生き方、人生のしまい方、地域医療そして研修医の学びなどを撮りたいとの申し出があり撮っていただいた。まったりとした雰囲気の中で、さまざまな人生の選択や、この地域でどう暮らすかなどが描かれている。地域医療の現場では、「在宅医療」が重要な柱である。近年は国も在宅医療に舵を切っており、高齢になっても病気になっても障がいがあっても、時々入院、ほぼ在宅と、地域包括ケアシステムにより住み慣れた家で過ごすことをサポートすることが課題となっている。そのため、医療だけでなく日常生活を支える医療、治す医療から治し支える医療が求められてくる。
 病院は難しい病気の治療ができ、24時間体制で医師や看護師が対応でき、検査もすぐ行える。その代わり規則があり、食事や飲酒、付き添いや面会も制限される。それに対し在宅は、難しい治療はできず、緊急対応に時間がかかる。その代わり自分の生活リズムや習慣を保て、食事や飲酒もある程度自由、他の患者さんに気を遣わず、家族も病院通いが不要、孫や友人、ペットとも会いやすく、趣味も楽しめる、施設はこの中間くらいと考えている。
 昨年の暮れに、自分の母の看取りを経験した。脳梗塞を患い、施設を経て病院に入院していたが、最期を迎えるにあたり、私が嘱託をしている特別養護老人ホームに転院させてもらった。病院では寝たきりで点滴をしていたが、特養では座らせて、口から食べさせてもらい、入浴もすると肌のツヤが変わってきた。家族や親戚、友人にも全員会えた。3週間ほど私は泊まり込み、スタッフにも見守ってもらい看取りをすることができた。このまま病院にいたら亡くなってから呼ばれることになったと思う。病院のリソースには限りがあり、その人のADL(Activities of Daily Living:日常生活を送る上で必要不可欠な基本的な動作のこと)を高めることは難しいが、介護施設は生活面をバックアップしてくれるため、少し元気になって母らしい最期を迎えられたと思っている。
 患者が今の状態で退院し在宅に移行できるかどうかは、カンファレンスで検討される。映画には、多職種による退院カンファレンスの場面も出てくる。多職種が連携するには、それぞれが個別に動くのではなく、その人のためにワンチームになることが重要である。
 また、「物語に寄り添う医療」を私は大切にしている。認知症で徘徊したり暴れたりする患者さんにも物語がある。ゴルフ練習場の経営者だった患者さんが、寝たきりで言葉も発しない状態から、ゴルフの話をすると起き上がって話してくれるなど、物語の中で寄り添っていくと落ち着くことは私たちもよく経験している。
 映画には、沖縄育ちの女性が明日香村に嫁ぎ、その人の母が認知症になったため村に呼び寄せた話が出てくる。沖縄で離島ナースをしていた経験を持つ訪問看護師が、その患者さんのために沖縄の音楽をかけると、起きて踊り出し、家族も驚いていた。その後、次第に老衰が進んで起き上がれなくなり、かろうじて指先だけが動く様子を見て、看取りが近づいたサインを感じるという場面が描かれている。

健康とウェルビーイング

 ウェルビーイングという言葉が注目されるようになった。これは、単に病気がないことではなく、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を意味する。従来の健康寿命を伸ばす医学モデルではなく、もっと広い意味で健康に長生きすることを考えたい。私が医師になったころは成人病予防に食事や運動が大事だと言われていたが、それに加えて生きがいや人間関係、ふれあい、ゆとり、自己表現などが重要になっている。
 人の健康には個人の要因だけでなく、住む家や周りの環境など、社会的要因が影響を与える。健康の社会的決定要因、つまり貧困、教育格差、交通弱者、孤立といった問題にも目を向ける必要がある。病気や障がいがあっても家族に囲まれてニコニコしている人と、病気や障がいはなくても文句ばかり言って周囲から疎まれている人、どちらが健康的な生き方をしていると言えるか。私は、健康の前に「幸福」があり、医療はその一助であるべきだと考えている。いくら検査値が改善しても、家に帰った途端に元の生活に戻り、孤独や経済的困難にさらされていては意味がない。

社会的つながりとおせっかい

 高齢社会が進み、病院は病気を治すだけでは経営がさらに厳しくなると予想される。病院が地域とつながり、地域と一緒に守っていく発想が必要である。社会的処方やコミュニティナース、暮らしの保健室といった活動は、地域で暮らしに寄り添う医療・介護の実践例として各地で芽吹きつつある。島根県雲南市、北海道更別村などが先進地であるコミュニティナースは、病院ではなく地域の中の暮らしに近い場所で医療につなぐきっかけづくりをしている。社会的処方はイギリスで発達しており、患者の課題解決のために地域の活動やサービスなどの社会的資源につなぐ方法。暮らしの保健室活動は、身近なところに看護師がいて、気軽に相談に行けるというもので、全国に広がりつつある。
 明日香村では、以前テレビにも取り上げられた尼僧で公認心理士、緩和ケアの専門家でもある佐々木慈瞳さんに診療所や健康福祉センターに週1回来て歩き回ってもらい、さまざまな相談に乗ってもらっている。そして、後でその話をカルテに全部書いてくれるので、5分診療では聞けなかった深い話を把握できる。
 地域共生社会を紹介するのに分かりやすい例を紹介する。滋賀県東近江市にある永源寺診療所では、花戸貴司医師を中心に「地域丸ごとケア」に取り組んでいる。認知症の人が地域を徘徊していると周囲の人が報告してくれるといった仕組みが出来上がっている。地域共生社会の中で医療に何ができるかというと、先ほど述べたウェルビーイングやコミュニティナース、社会的処方、総合診療医の養成がキーワードになると考えている。
 ウェルビーイングな地域を作るには、その人の物語や強みを生かし、高齢者がずっと元気で地域の中で社会に関わってもらう「じじばばのエンパワメント」が有効である。明日香村では地域包括ケアに向けて、診療所が医療と介護の拠り所になり、人が集まるような地域の灯台になるように、医療介護の拠点整備事業に着手している。

地域の医療を

 地域医療を語る時に、よくレンズに例えて話す。400倍の望遠レンズは病院の原因などを探るため、40倍の等倍レンズは体全体のことや高齢者総合評価などを見るため、4倍のマクロレンズは家族や地域のケアを見るためと使い分け、医師は400倍や40倍、看護師やケアマネージャーは4倍レンズと役割分担している。自宅に帰った時の生活まで考えて患者を退院させる見方が重要である。
 その時に、総合診療専門医の「病を診る・人を診る・地域を診る」という視点が必要になる。先日、北海道の国保の方々と一緒に島根県の雲南市立病院を視察に訪れたところ、地方都市の281床の病院に13名の総合診療医がいると聞いて驚いた。同時期に、県内の済生会江津総合病院が医師の高齢化と人材不足で危機にさらされている中、島根大学附属病院の総合診療科から医師3名を派遣して助けられたという事例が発表された。雲南市立病院からも総合診療医が民間の病院と国保診療所に1名ずつ派遣され、地域をカバーしている。北海道の更別村にも総合診療医が5名いると聞く。私がへき地医療に携わった中核の病院である南奈良総合病院でも、へき地に応援を送っている。

地域医療をナッジ理論で広げる

 最後に、医療の業界でもよく使われるナッジ理論について紹介する。「ナッジ」とは、小さな誘導の意味。行動経済学に基づいて人々の自由な意思決定を尊重しつつ、選択肢の提示方法や環境を変えることで望ましい方法へ後押しする手法で、「ついついやる」がキーワードになっている。国保の特定健診受診でも、日曜に健診を設けるとか、受診する前提で物事を動かすなどの方法で使われている。
 最近は、地域医療をナッジ理論で救う方法を試みている。「医師、看護師が辞めて大変だから来てくれないか」「医師・看護師を確保したい」と言われても、そんな大変なところに行きたい人はなかなか現れない。そこで個人の選択を強制せずに少しの誘導を加えるナッジ理論の発想で考えると、「一緒に地域を楽しみませんか」あるいは「住民がすごく温かい」などプラスの部分があれば、来てくれると考えている。学生や研修医のうちに地域に行くと、村ごと歓迎してくれて住民と仲良くなり、そこの地域が大好きになってそこで働きたいという人も出てきている。
 映画の制作や学生・研修医を受け入れる中で、地域医療に関してメッセージを伝えている。地域医療という言葉一つでも、「地域で」単に医療をしているのではなく、「地域の」住民と一緒に必要な医療をしていく、この「で」と「の」で地域医療は大きく変わってくる。地域の医療をしていくためには、住民の生活の目線に近づいて一緒に取り組むような作戦を病院としても展開していけたら面白いと考えている。
 

ポスター発表

シンポジウム

地域包括ケアシステム構築に向けた北海道の取組
北海道保健福祉部地域医療推進局地域医療課 課長 川上 禎之 氏
 2040年を見据え、2026年度策定する予定の「新たな地域医療構想」は、外来・在宅、介護連携なども新たな地域医療構想の対象にするという方向性が示された。検討会の中でも「高齢者救急」と「在宅医療」が主要な論点の一つとなっていた。
 道が2025年に策定した医療計画では、在宅医療圏を39圏域と設定し、在宅医療圏ごとに「積極的な役割を担う医療機関」、「連携を担う拠点」の整備を進めていくことにした。市町村がこれまでも実現できていることは継続、市町村にとってハードルの高い部分は一緒に取り組むという枠組みとなった。
 年間400万円という補助金を新たに設け、「連携を担う拠点」の方々には事務作業をメインにお願いし、補助金の半分を拠点の方々の人件費に活用。「積極的な役割を担う医療機関」は在宅医療を行う医師を想定し、事業のアイデア出しや講師など、マネジャー兼プレーヤーの役割をお願いし、謝金や経費に残りの半分を使っていただく想定としている。現在、道内各地の医師会、先生、市町村の方々へご説明にお邪魔している。
 ファミリークリニックさっぽろ山鼻は、都会でも医療が届かない人たちが多くいるという問題意識を持ち、地域の方々との交流イベントを開催したり、子どもたちの医療体験の場を設けるなど多彩な活動を行っている。
 由仁町立診療所は、医師会の事業「おたがいさまネット」で主治医不在時には連携医が助言や往診、後方支援病院が急変時の入院受け入れを行うなどの取り組みを行っている。
 札幌市手稲区の稲生会は、医療的ケア児の小学校での受け入れ支援や医療関係者向けの実技講習会、広報活動などを全道各地で展開している。
 鹿追町の訪問看護ステーション柏の森は、学生と共同で、医療的ケアを必要とする人と健常者が一緒に映画鑑賞や運動会を楽しむ機会を創出している。
 地域医療、在宅医療をどう確保するか、皆様のお力添えをいただきながら進めていきたい。
総合診療医の視点を活かした ウェルビーイングを高める地域包括ケアシステム構築
北海道立羽幌病院 副院長 佐々尾 航 氏
 道立羽幌病院に私が勤めて13年。診療圏域は羽幌町、苫前町、初山別村で合わせた人口が1万人を切っている。内科・小児科以外は非常勤、病床数は91。急性期病院としての対応、地域のかかりつけ医として生活習慣病の管理、予防から在宅まで対応。学校医、産業医、介護認定審査会、在宅復帰支援、離島や留萌市立病院への診療支援などへき地医療拠点病院として巡回診療も行っている。
 総合診療医は、患者の生活背景、地域全体も含めて診る。その場の特性、医療介護福祉の資源に応じて働き方を変えて対応できる存在。都会でも田舎でも、未病でも人生の最終段階でも、子どもでも老人でも診ることができるのが総合診療医の魅力。
 2016年には理学療法士や社会福祉士も確保し、地域包括ケア病棟を開設できた。留萌中南部の町村には、入院時の連絡情報シートがあり、入院7日以内に多職種カンファレンスを実施し退院支援計画を立案している。2024年度は478人の入院に対して支援依頼は98.7%。そして83%が地域連携室で支援している。支援していない方は短期入院や亡くなられた患者さんが主。特に入院患者の背景には何があるのかを重視している。中にはゴミ屋敷に住んでいる、お金がなくてご飯を食べられていないといったケースもある。社会的バイタルサインを使ってチェックすることで漏れが少なくなる。
 各職員が入院患者に何をしなければならないかわかるようにフローも作成し見える化もしている。高齢者総合機能評価というツールを活用すると在宅復帰患者が増えると言われており、羽幌病院でも実施し、患者やケアマネジャーとも共有。理学療法士とともに退院前の訪問も行い、住まいの課題点を踏まえたリハビリを行っている。病院内外の多職種連携はとても重要で、日常的にコミュニケーションがとれる関係性、顔の見える関係はとても大事だと考えている。
 
事務局起点の地域包括ケアシステム構築と経営改革~公立芽室病院の事例
白老町立国民健康保険病院 病院経営監 西科 純 氏

 3月まで公立芽室病院の事務長をしていたため、芽室病院の話が多くなることをお断りしておきたい。
 芽室病院は私が人事異動で赴任した当初、経営難で銀行からの借金もあり、内科医は2人。北海道厚生局の個別指導が入り約1億円の返還金が発生、院長降任、自己資金比率は道内でワースト2位、議会や役場から追及されるなど、組織内はボロボロだった。
 課題が山積する中で経営のV字回復を目指した。経営改革策は30を超え、病院内でワーキンググループを作った。例えば健診が伸び悩んでいたらワーキンググループが町のイベントでビラ配りをするなど。
 また経営を事務局任せにするのではなく、現場こそ経営感覚が必要だとする京セラの稲盛さんが行った「アメーバー経営」を採用。島根県公立邑智病院の部門別原価管理会計システムを学び、芽室病院でも全ての課で毎月PDCAチェックを行った。
 今では内科医が2人から6人に増え、リハビリスタッフも5人から15人に。訪問看護ステーションも院内に設置、利用者が増えている。遠隔医療も開始し、クラウドファンディングで訪問看護用の車を確保したり、セル看護提供方式も導入。健診数も回復しピーク並みに復活、オンライン診療を将来に向けて推進、病院まつりを3回開催し1,500人もの町民が参加。町の広報紙とは別に病院の広報紙を全戸配布。出前講座も積極的に進めている。コミュニケーションレターは感謝の言葉も入ってくるようになり院内に掲示。職員満足度調査も患者満足度調査も、結果は満足度が高まっている。190人で構成される公立芽室病院を支える会は、新入社員の歓迎会やフォーラム開催、花壇を整備。また職員が町のゲートボール、盆踊り、マラソン大会に参加したり、社協の祭りに出店するなど関係性を深めている。
 2019年から4年連続で黒字化した。断らない救急応需率の向上も進み、病院と住民の距離も近づいた。白老町立国民健康保険病院もさまざまな課題を抱えているが、改革のために開催した自由参加方式の会議には、職員約100人中61名が参加、これには展望を感じる。
 白老町の良いところは、医療と介護の連携を町が積極的に行おうとしている点。土壌はできていると思う。白老町には、“コタンの赤ひげ”こと高橋房次先生がいた。1960年に亡くなられたが、吹雪でも深夜でも往診を絶対に断らず、貧しい人からは治療代も取らないという医師がいた町である。
 ウェルビーイングを高める地域包括ケア・システムは大切だが、その前に、病院で働く人たちが地域の方々に信頼され、この病院で働くことが本当に幸せだと感じる状況でなければ実現できないと思う。
地域包括ケア・システムの訪問看護の役割 ~ウェルビーイングの視点から~
合同会社Grace.I 訪問看護ステーション恵 代表社員・管理者 井形 恵 氏

 私は総合病院の看護師を7年前に退職し、訪問看護ステーションを起業した。常勤看護師が7名、非常勤2名が在籍、利用者は85名前後、看取り件数は年間15名から20名ほど。自宅療養が困難な方、終末期の方向けに2025年2月に定員3名のナーシングホーム恵も開業した。
 地域包括ケアシステムの課題は、人生の最期をどこで迎えたいか、希望と実際の違いが大きい点にある。2022年の厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、自宅を希望される方が60%、病院約30%、ホスピス・施設が約10%。しかし実態は病院が73%、自宅15%、ホスピス・施設が12%となっている。
 原因は、第一に病院の治療方針が優先されがちな点。入院中に医師や看護師に「こんな状態では介護が大変だから、家は無理」と言われると、自宅介護を諦めてしまうケースがある。
 第二に在宅療養の情報不足。医療者やケアマネジャー、ご本人やご家族でも在宅療養のイメージがつかない方が多い。私たちが訪問介護に入った際も「もっと早く知っていればこんな苦労はしなくて済んだのに」という話を聞くことがある。第三に地域によってはサービス体制が不十分である点が挙げられる。
 訪問看護の役割は、医療的ケアの提供(点滴、疼痛管理など)、日常生活支援(清拭、整容、排泄など)といった入院中と変わらない看護の提供。在宅ではご家族への精神的サポートや技術指導も大切な役割。本人とご家族では半々と言っていいほどご家族への支援が重要である。
 多職種連携への支援体制の構築では、担当ケアマネジャーがいることがほとんどだが、看取りの場面では看護師の訪問が多くなることもあり、情報は看護師が一番多く持っているので、必要なサービス体制を整えてもらうためにアンテナを張り巡らせることも重要と考えている。
 病院では私たちの仕事に患者さんが合わせてもらう、在宅では訪問看護師がその方の生活にお邪魔させてもらう点が異なる。自宅介護で好きなものを食べるとむせない、食欲が増すということがよくある。家の環境が一番の薬ではないかと思う。
 訪問介護は、一人の患者さんに多く時間をかけられるのも良いところ。家族が集まって話をしたり食事をしたりと家族の思い出になったケースや、患者さんの妻から「介護してきたこの期間が今まで生きてきた中で一番幸せな時間でした」と言われたケースもあった。在宅療養は支援体制が整えば可能な選択肢。地域包括ケアにおける看護職の役割は大きいと考えている。

発言者への感想・助言

助言者
明日香村国民健康保険診療所 管理者・所長     武田 以知郎 氏

 道立羽幌病院ではさまざまな課題をクリアし総合診療を進められている点、公立芽室病院は職員のモチベーションアップを図りながら地域の信頼獲得を実現した点が素晴らしい。明日香村にある医療介護の灯台は、北海道では羽幌病院や芽室病院にもあり、そうした灯りが徐々に道内各地に増えると、そこに医師や介護などの人材も集まり、灯りが広がると思う。
 家での看取りが望ましいケースはたくさんある。しかし開業医の先生にとって「在宅医療」への関心は薄く、負担が大きいのも全国共通。介護職も含めて人材育成を大切に進めていきたい。
司会者
北海道国民健康保険診療施設連絡協議会 会長
足寄町国民健康保険病院 院長 村上 英之 氏

 ウェルビーイングは、在宅医療・在宅介護に限らず、どの場所においても尊重できると思う。今回のシンポジウムでは、病院の経営改革は難しい、在宅介護は難しい、というような今までの考えは、思い込みが邪魔をしていると感じた。コロナ禍、そして高齢化社会を迎え、思い込みではなく、新しいアプローチが求められると思う。

ー 北の恵み ふるさと健康料理 ー

三笠市の特産 スイートコーン


甘みとコクがぎゅっと詰まった三笠の宝石、スイートコーン
 
 三笠市は空知地方の南部に位置し、豊かな森と湖に恵まれ、北海道の石炭と鉄道の発祥の地として栄えた歴史あるまちでもあります。また近年では、北海道三笠高等学校における食のプロフェッショナルの育成や「三笠市食のまちづくり基本条例」を制定し、「食」を通じて地域の活性化に取り組んでいるまちです。
 三笠市では、イエロー系のとうもろこしの王様と呼ばれる「ゴールドラッシュ」や粒が大きめで、プリっとした食感の「恵味ゴールド」等のスイートコーンが栽培されています。寒暖差が大きい気候と、こだわった土づくりにより糖度が高く、コクのあるものが出来上がります。市内で手に入る農家さんの直売は甘みが格別です。三笠市にお越しの際はぜひご賞味ください。
 そのほか、北海道の伝統野菜「八列とうきび」も市内で栽培されています。市のイベントなどで販売されていますので、開拓の歴史と食文化を体験してはいかがでしょうか。
 さて、スイートコーンには、腸内環境を整え、便秘や大腸がんの予防が期待される食物繊維、糖質をエネルギーに変換して疲労回復に役立つビタミンB1、強い抗酸化作用を持ち細胞の老化を防ぐビタミンEといった健康に必要な栄養素がたくさん含まれています。食物繊維、ビタミンB1・Eは熱に強いため、加熱してもしっかり摂ることができます。
 今回は7月が旬のスイートコーンを楽しめるレシピを2つご紹介します。どちらも簡単なのでお試しください。
(レシピ:保健福祉課管理栄養士 伏木田愛梨 髙橋舞/文:保健福祉課管理栄養士 岩佐麻央)

コーンとチーズのスコップコロッケ

◆材料(2人分)
コーン    
ジャガイモ
タマネギ
豚ひき肉
スライスチーズ

こしょう
粉チーズ
パン粉
飾り用コーン
青のり 

 130g
 300g(2個)
 100g
 60g
 18g×2枚
 少々
 少々
 小さじ2
 大さじ3
 10g
 1g

◆栄養成分(1人分)
エネルギー358kcal、たんぱく質15.1g、脂質11.3g、炭水化物43.5g、食物繊維9.0g、塩分1.0g

◆作り方
下準備
・ジャガイモは皮をむき、一口大に切る。タマネギはみじん切り。パン粉とチーズは混ぜておく。
・コーンは包丁で実を切り落とす。
 耐熱ボウルにジャガイモと水(分量外)を入れ、電子レンジ600Wで5分加熱する(足りなければ追加で加熱する)。
フライパンにタマネギ、豚ひき肉を炒め、色が変わってきたらコーンを加える。
をフォークで潰し、と塩・こしょうを加える。
器の1/3の高さまでを入れ、スライスチーズをのせ、覆うように③を入れる。
パン粉を炒って粉チーズと合わせ、の上にまんべんなくかける。
飾り用のコーンと青のりをかける。

コーンと鶏肉の炊き込みご飯

◆材料(2人分)
コーン
鶏ささみ
梅干し

和風顆粒だし

  
 1本(正味150g)
 150g(2~3つ程度)
 2個
 大さじ2
 小さじ1
 2合
 適量
 
◆栄養価(1人分)
エネルギー275kcal、たんぱく質9.1g、脂質1.2g、炭水化物47.9g、食物繊維1.8g、食塩相当量0.3g
◆作り方
下準備        
・米は浸水しておく。        
・コーンは包丁で実を切り落とす(芯もとっておく)。
米と2合分の水を炊飯器に入れ、鶏ささみ・コーンを広げてのせる。    
梅干しをちぎりながら入れ、酒・顆粒だし・コーンの芯も入れて炊飯する。        
炊けたらコーンの芯を取り出し、ささみをほぐしながら全体をよく混ぜる。    

ー レオおばさんはレオナルド ー

転倒予防体操②

福岡永告子 FUKUOKA Etsuko(文) 伊藤優香 ITO Yuka(モデル)  

つまずき転倒

 前回「スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上の転倒」と 「階段及びステップからの転落及びその上での転倒」を比較すると、80歳以上の場合「スリップ、 つまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が顕著に多いという結果が報告されたことをお伝えしました。高齢者に限らず、転倒災害は労働災害全体の約四分の一を占めるほど多く、その中でも「つまずき」によるものが多く、職場環境や心身機能の衰え、注意不足が主な原因となっているようです。今回はつまずきによる転倒を考えていきたいと思います。

つまずく理由

 ふくらはぎと太ももの筋力低下、背筋の減少、そして、蹴る力が弱まることがつまずく理由として挙げられています。
 ①ふくらはぎの筋肉の減少
  ふくらはぎの筋肉は、足を地面から押し上げる役割を果たします。
  「第2の心臓」とも呼ばれ、歩行時にはポンプの役目を果たし、足にたまった血液などを心臓に戻しています。このふくらはぎの筋肉を動かさないと血液が滞り、足はむくんで重くなります。そして歩きづらくなって、つまずきやすくなってしまうのです。
 ②太ももの筋肉の減少
  太ももの前面に位置し、膝を伸ばす役割を果たします。
  歩行中に股関節や膝関節を安定させる役割もあり、この筋肉が弱いと膝折れ(立っていると膝がカクッと曲がる状態)が起こってしまいます。この太ももの筋肉が減ると、膝を上げる力が弱まり、数cmの段差さえ越えにくくなります。
 ③背筋の減少
  背筋が減ると猫背になり、重心が前方に傾く。足が持ち上がりにくくなり、視点も下がるため転びやすくなってしまいます。「下を向き、歩幅や腕の振りが小さく、つま先から歩く」これが高齢者に多い歩き方といわれています。
 ④蹴る力が弱まる
  太ももとふくらはぎ、足全体の筋肉が減ると、足を上げる力が衰え、つま先も上げづらくなるので“すり足”で歩いてしまいつまずきやすくなります。また、つまずいた時に踏ん張れずバランスを崩して転倒につながります。

ウォーキングでつまずき予防

 ・大股歩きでふくらはぎを刺激する
  歩行時に歩幅が小さいのは、膝が上がっていない証拠です。小股の場合、筋肉を使わなくても歩けるので筋肉が弱まり、ますます膝が上がらなくなります。いつもより1足分前に足を出すようにすると、ふくらはぎの筋肉の収縮がしっかりと入り、足に溜まった血液を心臓へと送ってくれます。
 ・腕を後ろに深く引いて肩甲骨を動かす
  歩行時に腕をリズミカルに後ろに振るイメージで歩くと、肩甲骨が動くため猫背防止になります。肩甲骨を意識して動かすと骨盤も連動して動くので全身の筋肉を鍛えられます。
 ・坂道ウォーキングで下半身の筋肉を鍛える
  傾斜のある坂道でのウォーキングは、体を傾斜に合わせるため、平地を歩いた場合よりも脚や腰、お腹などの筋肉を使う必要があります。また、坂道を歩くと、平地をウォーキングした場合はあまり使われにくい、内ももの筋肉である「内転筋」やすねの筋肉、そして体幹も使用されます。少しだけ前に傾けると、バランスを保ちやすく体が安定するため体幹からの力が骨盤から足裏にかけてしっかり伝わります。
   いつものウォーキングコースに坂道をくみこんだり、季節の良いこの時期に森林を歩いたりするのもお勧めです。

自宅でできる体操

   自宅でできる転倒予防体操と、基本の筋力アップの体操(写真のみ)をご紹介します。
   覚えたものだけでも構いません。生活の中に体操を取り入れてください。転倒予防体操
 

転倒予防体操②北海道の国保令和7年7月号レオおばさんはレオナルドYouTube動画
https://youtu.be/DQfLFFGe8x0
 

これまでの動画北海道の国保レオおばさんはレオナルドYouTube動画
https://k2-wellness.net/
メンバーページパスワード「Leo1989119」

今月のフィットネストーク 
住み慣れた町を離れる

 15年ちかく続いている介護予防教室では、2年前ぐらいから、住み慣れた町を離れていく方が増えてきています。子どもから「近くに引っ越してきてほしい」といわれていて「呼んでもらっているうちに行かないと…」と決心される方。「車を手放したら生活できなくなるし、雪かきも限界だし…」と利便性の高い、ケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅に住まいを移す方。住み慣れた町を離れることへの寂しさや、新しい街になじめるかの不安は、多くの方が感じる共通の悩みだと思います。住み慣れた町には、長年の思い出や友人、馴染みの風景が詰まっています。そこを離れるという決断は決して簡単なものではありません。それでも、決断してからは本当に潔いです。私が勇断に感心していると「潔くないと前に進めないからね」、「新しい環境になじむためにも体力をつけないと‼」体力的には「2002年の高齢者は1992年の高齢者より10歳程度若返っている」(2006年「日本人高齢者における身体機能の縦断的・横断的変化に関する研究」)という研究結果もあるようです。最近のスポーツ庁の「体力・運動能力調査」でも高齢者の体は年々若返っていると出ています。体の若返りは気持ちの若さにも関係すると思います。新しい環境に適応できる体力を少しでも維持できるように、私たちができることをこれからもしていこうと思います。


ー 令和7年度国保保健事業に対する国庫助成について ー

北海道保健福祉部健康安全局国保医療課

Ⅰ 国保保健事業について

1 助成対象事業

 都道府県や市町村では、法律に基づき、国保加入者の皆さんの健康を守り、より元気に暮らしていただくため、様々な保健事業を実施しております。これらの事業をさらに充実・強化させるため、昭和53年度から国の助成制度が設けられました。今回は、令和7年度の助成事業の内容や令和6年度に実施した事業についてご説明します。
(1) 国民健康保険保険者努力支援交付金(事業費分・事業費連動分)
 ① 都道府県国保ヘルスアップ支援事業
 都道府県が実施する保健事業であり、市町村が実施する事業の支援や、国保加入者の健康の保持や増進、病気の予防のための事業を実施します。
 ② 市町村国保ヘルスアップ事業
 市町村が実施する保健事業であり、国保加入者の健康を守り、病気の予防や生活の質の向上を目的に実施します。
(2) 国民健康保険調整交付金(保健事業分)
 ① 市町村国保保健事業
ア 直営診療施設整備事業
 詳細な要件等については「Ⅳ 直営診療施設整備事業について」のとおりです。  
イ 健康管理センター等健康管理事業等
 特定健診や人間ドックなどが実施される施設で、健診の事後指導をしたり、歯と口の健康を守るために歯科治療の相談などに応じたりする事業です。
ウ 総合保健施設整備等事業
 直営診療施設と一緒に、医療や福祉のサービスを提供します。健康相談や個人の健康記録の管理などが、国からの助成の対象です。

Ⅱ 都道府県国保ヘルスアップ支援事業について

 北海道が令和6年度に実施した事業についてご説明します。(令和7年度の実施事業については現在協議中です)

1 交付対象事業

(1) 市町村の現状把握・分析等
 市町村ごとの健康や医療情報を分析し、事業へ活用できるデータを市町村へ提供しました。また、みなし健診を実施しており、みなし健診とは、普段の通院で特定健診(40~74歳を対象に実施する生活習慣病予防のための健診)と同じ内容を検査している場合、その結果を自治体にご提供いただくことで特定健診を受けたとみなす事業です。みなし健診については、10月号で掲載予定です。
(2) 都道府県が実施する保健事業
 令和6年度は、薬局受診勧奨事業(薬局薬剤師が国保加入者に対し、特定健診の受診を勧める事業)を実施しました。令和7年度の事業内容については9月号に掲載予定です。
(3) 人材の確保・育成事業
 医療機関等に所属する看護師や管理栄養士などの専門職を対象に、糖尿病の重症化予防に関する研修などを実施しました。
(4) その他
 市町村職員向けに研修を実施したり、健康や医療情報を分析するためのデータベースを改修したりなど、住民のみなさんが健康に暮らすための事業を実施しています。 

Ⅲ 市町村国保ヘルスアップ事業について

 具体的な事業内容についてご説明します。

1 事業内容

 (1)  健康教育、健康相談
 乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢向けに行う事業です。例えば、国保加入者である児童を対象とした健康増進のための普及啓発に合わせ、保護者へ向けた特定健診等の重要性を含めた健康教育や、歯周病予防教室、乳幼児向けの歯磨き教室などを実施します。
 (2)  地域包括ケアの視点を踏まえた保健事業
 市町村の国保担当部署が医療、介護、保健、福祉、住まいなどの関係部署などと連携して、国保加入者の健康の保持増進や健康意識の向上を図り、主体的に健康づくりに取り組むことができるよう支援する事業です。例として、生活習慣病と認知機能低下予防の一環として前期高齢者(65~74歳)を対象とした運動教室などが挙げられます。
 (3)  特定健診未受診者対策
 特定健診未受診者の健康意識の向上と特定健診等の実施率の向上を図ります。 
 (4) 特定保健指導未利用者対策
 特定保健指導未利用者への電話や訪問による利用勧奨事業です。
 (5) 40歳未満早期介入保健指導事業
 特定健診の対象外である40歳未満の住民に対して、生活習慣病の1次予防に重点を置いた取組です。
 (6) 特定健診継続受診対策等
 特定健診を受診した方に次年度以降も継続して受診していただくために多様な取組を行い、継続受診を促す事業や、結果を踏まえて生活習慣の維持や改善を促す保健事業です。
 (7) その他生活習慣病予防対策
 生活習慣病予備群や特定保健指導予備群等の国保加入者を対象として行う運動教室や継続的な保健指導など、(3)~(6)に当てはまらない生活習慣病予防対策を目的とした事業です。
 (8) 生活習慣病等重症化予防
 特定健診の結果や医療機関から市町村へ送付される診療内容や費用(レセプト情報)等を活用して、生活習慣病や循環器病及び慢性腎臓病等の予防のため、国保加入者やその家族等の生活環境、生活習慣等を把握し、ライフステージ等に応じた医療機関への受診勧奨や保健指導を行う事業です。
 (9) 糖尿病性腎症重症化予防
 糖尿病が原因で腎臓機能が低下する糖尿病性腎症の患者であって、人工透析導入前段階の方に対して、市町村が医療機関等と連携して実施する医療機関への受診勧奨や保健指導を行う事業です。
 (10) 保健指導
①禁煙支援
 がんや慢性呼吸器疾患などの発症予防・重症化予防のため、特定健診の機会等を活用して、喫煙者の喫煙状況の把握や禁煙の重要性を高めるアドバイス、禁煙のための解決策の提案等を行い、禁煙を希望する方に対して、保健指導や医療機関等の紹介などを行う事業です。
②二次性骨折予防に関する取組
 転倒予防や運動、栄養等についての保健指導を実施して、骨粗鬆症についての治療の開始や受診継続をしていることを確認する事業です。
 (11) 医薬品の適正使用を促す保健指導
 必要以上に多くの種類の薬を服用している方(多剤投与者)等に対して、医薬品の適正使用の推進や適正受診の促進を図るとともに、必要に応じて、保健師等が多剤投与者等の事情を十分に聴取した上で、訪問、電話、オンライン等による等による保健指導を実施する事業です。
 (12) PHR(パーソナルヘルスレコード)を利活用した保健事業
 生活習慣病の改善が必要な国保加入者や、糖尿病性腎症重症の患者に対し、特定健診の結果などに加えて、本人が自らアプリなどにより記録する血圧、心拍数、体重、体脂肪、食事、運動、服薬等の健康状態などに関するデータ(PHRデータ)を活用して、保健指導を実施する事業です。

Ⅳ 直営診療施設整備事業について

 国保直営診療施設に対しては、次の国庫補助が行われております。

1 医療施設等施設・設備整備費補助(厚生労働省医政局所管)

 へき地診療所(国保直営診療所を含む)が行う施設・設備整備事業に対する補助(補助率:国1/2)。

2 国民健康保険調整交付金(厚生労働省保険局所管)

   国民健康保険調整交付金による助成については、国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令第6条第1号ルに規定する「国保へき地直営診療所運営費補助」、同条同号ヲに規定する「その他特別の事情がある場合」のうち、「直営診療施設の運営に係る特別に要した費用に対する補助」、「直営診療施設整備に関する費用に対する補助」の3種類となっています。
(1) 国保へき地直営診療所運営費補助
 国保直営診療施設のうち、第1種へき地診療所、第2種へき地診療所の運営赤字に対する補助(補助率:第1種へき地…2/3、第2種へき地…5/10)。
(2) 直営診療施設の運営に係る特別に要した費用に対する補助
 災害等による被害を受け復旧に要した費用など、国保直営診療施設の運営において特別に要した費用に対する補助。
(3) 直営診療施設整備に関する費用に対する補助
 国保直営診療施設に係る施設・設備整備に対する補助(補助率:1/3)
国保直営診療施設の整備費に対する補助については、昭和21年度から開始され、直営診療施設費補助金により措置されてきましたが、昭和53年度から、国の国民健康保険調整交付金(直営診療施設整備分)となり、平成30年度からは、市町村国保保健事業に位置づけられ、国民健康保険調整交付金(保健事業分)交付要綱等により行われることとなりました。
 なお、令和6年度の交付実績については別表のとおりです。

令和7年度KDB Expander説明会 ー
 本会では、5月27日から6月10日にわたり、KDB Expander説明会が会場とオンラインで7回開催され、総計で245名が参加しました。
 本記事は、市町村の保健事業に活用していただくため、説明会で本会の担当者が講演した内容を再編集して掲載します。

北海道における予防・健康づくり推進に向けた取組

 北海道では、「道民が健康で豊かに過ごすことができる社会の実現」に向け、「全世代型予防・健康づくり推進事業」として、健康寿命の延伸を目指すと共に、保険料の負担軽減や医療介護費の適正化を進めています。保健事業に取り組む市町村では、マンパワー不足などの課題があり、事業展開が難しい状況となっています。そこで、本会がKDBシステムやKDB Expander等のツールを活用し、各市町村の課題などに寄り添い伴走支援を行っています。
 国保の財政運営は、全道の医療費を賄うため北海道から179市町村に対し国保事業費納付金を求め、市町村からは被保険者に保険料(税)を求める仕組みです。各市町村が、保険者努力支援交付金などを有効に活用しながら重症化予防事業などの取組を実施することにより、医療・介護費の適正化につながり、全道の医療費が低くなることが見込まれます。それにより、北海道が各市町村に求める国保事業費納付金も少なくなり、保険料(税)の負担も減っていくという好循環が生まれます。
 しかしながら、高齢化により医療費や介護給付費の抑制は難しい状況です。そのため、治療が必要な方を早期に外来医療につなげ、重症化してからの入院や介護に至らないよう効果的・効率的な保健事業を取り組むことが必要です。早期受診により外来件数や医療費が増加しても、重症化してからの入院医療費や介護給付費を抑制する構造変化が目指す姿です。
 北海道の医療費は、国保医療費が全国19位、後期医療費は全国8位と高い順位となっています。また、協会けんぽ医療費が全国3位と高い状況にあることから、国保や後期高齢者の加入者の医療費を抑制するためには、加入する前の段階である被用者保険時代の健康づくりが重要となります。

KDBシステム及びKDB Expanderの概要と活用

 KDB Expanderは、KDBシステムの機能を補完・拡充するシステムとして、令和5年度から本稼働しました。KDBシステムで管理する国保・後期・介護データに、協会けんぽデータ(被用者保険)を加えた健康・医療情報データベースと、分析システム及び統計システムを連結させたシステムです。全道人口の約7割(医療費にすると約8割)に当たる約370万人のデータをカバーし、10年分のデータを保有しています。協会けんぽのデータが加わることにより、制度横断的なデータ分析が可能となり、地域・職域連携に向けた取組や、まち全体の健康課題を踏まえた高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施にも活用できます。
 KDB Expanderでは、分析データや統計情報などをExcel形式にて自動生成し、市町村ポータルというポータルサイトで提供しています。市町村の担当者は、市町村ポータルにアクセスしていただき、必要な帳票をダウンロードしてすぐにご活用いただけます。また、健診を受診された方向けの健康レポートも保健指導等で活用できるものとして提供しています。これにより、データ分析や保健事業に係る対象者一覧の作成に係る事務負担の軽減が図られます。


図1 KDBシステムとKDB Expanderの特徴の違い

KDB Expander ポータルについて

 KDB Expanderの帳票は、国保・後期・協会けんぽを制度横断で確認可能です。KDBの帳票では手動で作成する必要があった制度横断的なデータをKDB Expanderが自動作成することで、作成に要する時間と手間を省力できます。
 一体的実施分析データ(医療)は、障老を考慮したもので、国保の65~69歳、70~74歳と後期の65~69歳、70~74歳が制度別に表示されています。そのため、制度を分けて見た際の医療費の特徴を把握することができます。(図2)

 

図2 一体的実施分析データ(医療)

地域・職域連携事業

 KDB Expanderでは、KDBで管理してきたデータに加え、被用者保険情報を連結しているのが特徴となっており、制度を跨ぐ分析ができる帳票として「地域・職域制度差分析」や「疾病別医療費分析」があります。
 地域保健と職域保健を合わせた健診の情報やレセプトデータなどを二次医療圏単位や北海道と比較することができ、国保だけではなく、住民全体を対象とした制度横断的な事業の展開につながるデータとなっております。

データヘルス計画評価【新規機能】

 令和8年度のデータヘルス計画の中間評価に活用いただける主な帳票として「データヘルス計画データセット」、「共通評価指標」があります。
 「データヘルス計画データセット」は、表やグラフを完成された形で、Excel形式で提供しているもので、データヘルス計画などの策定にそのまま活用できるものです。また、毎年度提供するデータなので、計画年度ごとの評価に活用できるものとなっております。(図3)
 「共通評価指標」は、データヘルス計画標準化の際に設定した北海道全体に共通する健康課題に関する評価指標27項目について、市町村、北海道、国の数値を提供しているものです。また、市町村の皆様で独自で設定されている評価指標を中心に、約90項目程度を今後追加で提供予定としております。

図3 データヘルス計画データセット

特定健診受診勧奨事業(みなし健診候補者抽出機能等)【新規機能】

 特定健診受診勧奨事業における事業評価に活用できる帳票では、「特定健診受診率・構成割合」、「月別特定健診受診率」があります。過去の特定健診受診履歴から「3年連続受診」などの区分として分類し、区分ごとの受診率の統計や月別の推移を確認することができるため、受診勧奨を行った集団ごとの評価ができます。そして、特定健診未受診者への受診勧奨対象者の選定には、「特定健診受診勧奨対象者一覧」を活用いただけます。新たにみなし健診候補者の分析が可能な機能を搭載したことにより、年間通院回数や医療機関受診時に特定健診検査項目に相当する検査の実施有無などの通院状況をレセプト確認することなく、把握することができます。(図4)

図4 みなし健診の候補者情報を追加

健康レポートの活用

 「健康レポート」は、健診受診者の過去5年間の健診結果や質問票の回答、AIによる分析結果を掲載しています。健診受診者の健康意識の啓発や生活習慣の改善に向けた行動変容の促進を目的としています。なおかつ、健康レポートをKDB Expanderで提供することにより、市町村のマンパワー不足の解消・健診受診後の保健事業の更なる充実を目指しています。(図5)
 

図5 健康レポート

生活習慣病重症化予防事業【新規機能】

 「重症化予防対象者一覧」では、各市町村で設定した抽出条件に応じて、生活習慣病の重症化予防事業の対象者を自動で抽出・リスト化して提供しています。リストには、対象疾患に係る直近の診療状況を把握することができるため、レセプトを確認する作業が省力化され、効率的に介入対象者を抽出できます。また、抽出された対象者については管理ツールを使用することにより、医療機関受診へつながったかなどの事業管理・評価を行うことができます。(図6)

図6 重症化予防対象者一覧

保険者努力支援制度

 KDB Expanderを活用することで、保険者努力支援制度の取組評価分の獲得に向けて活用いただける帳票があります。
 例えば、保険者努力支援制度の評価指標の「生活習慣病等の発症予防・重症化予防」については、帳票「糖尿病性腎症の対象者の概数把握」を活用することで、効果的な対象者抽出・事業評価を実施することができます。
 今後も保険者努力支援制度の点数獲得に向けたKDB Expanderの活用方法については、市町村の皆様に情報共有させていただきます。

地域の健康レポート(RHR)【新規機能】

  「地域の健康レポート(RHR)」は、健康課題に関する「わがまちの状況」を1枚でまとめたものです。これまでは、連合会職員が作成したものを市町村に提供しておりましたが、今年8月から、KDB Expanderにて自動で出力したRHRを提供できる予定です。自動で出力されたRHRを活用いただくことで、市町村における事務作業の省略化につなげ、各市町村の皆様が事業内容の検討にかけられる時間を増やすことができればと考えています。
(図7)

図7 地域の健康レポート

保健事業への活用事例の紹介

 KDB Expanderの各種帳票の説明に加え、KDB Expanderの市町村における活用事例を、3市町にご協力いただき紹介しました。特定健診受診勧奨事業の効果を月別で確認できる「月別特定健診受診率」、保健指導の際に活用いただける「健康レポート」や重症化予防事業における対象者抽出・事業管理を効率的にできる「重症化予防対象者一覧」と「管理ツール」について、各市町ごとに事業の内容・実施タイミング・実施状況に合わせた活用事例を提供いただきました。
 
ー 国保随想 ー

外国人に対する医療費の適正な保障PDF(937.41 KB)


ー 会の動き ー

第三者行為求償事務担当者講習会

(6月23日、6月30日Web開催)

第三者行為求償、積極的な取組を促す

 第三者行為求償事務担当者講習会を6月23日、6月30日の2日間、各保険者の実務担当者のみならず管理職級の職員を対象にWebにより開催した。
 はじめに、道保健福祉部健康安全局国保医療課の担当者からは「保険給付と損害賠償請求権の代位取得 私債権における債権管理手法」と題して債権管理方法及び令和7年4月施行の法改正に伴う今後の対応案について説明するとともに、「国保制度の中でも費用対効果が高いといわれる第三者行為求償事務に係る重要性を理解し、基礎知識等の向上に取り組み求償事務の進行管理を行うことが国保財政の健全化・安定化につながる」などと説明した。
 次に、本会の担当者から第三者行為求償事務は、保険給付の適正化と国保財政の健全化に資する重要な業務であるため、保険者作業の基礎知識や基本的な流れ、介護保険における求償事務対象者の発見方法、負傷原因照会書、傷病届勧奨通知の一括作成及びレセプトの私病分離など、保険者事務の参考となるよう留意点を説明した。
 本会の求償専門員からは、昨年受託した自賠責保険及び個人賠償責任保険に加えて、施設所有者賠償責任保険・生産物賠償責任保険の事例を基に保険概要や対応を紹介した。
 続いて、厚生労働省第三者行為求償事務アドバイザーで札幌市保健福祉局保険医療部国保健康推進担当課の杉本真希子氏は、保険者における求償事務の概要や保険者としての考え方など事例を基に説明した。その中で、第三者行為求償事務で大事なこととして「迅速に先手を打つ」「第三者行為求償事務は、求償そのものよりも対象者をどう掘り起こすか。やればやっただけ効果が見える業務である。事案については可能性とともに、シミュレーションを行いながら進めること」を強調した。
 最後に、青野・広田・おぎの法律事務所の弁護士、青野渉氏は「積極的な求償事務の運用」と題し事例を解説し、症状固定後も治療や介護が必要な重度後遺症の案件では、交通事故と因果関係が認められる治療(介護)であれば求償可能な場合もあり、自治体によっては第三者行為求償に基づき求償金請求訴訟等を提起し多額の支払いを受けている事例もあるため、積極的に求償する権利の行使を呼びかけた。

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事業部事業推進課

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