時流
就活秋の陣
小樽商科大学 商学部企業法学科教授 片桐由喜
大学生の就職状況がここ数年、いわゆる売り手市場である。団塊の世代がほぼ雇用市場から退出し、それを補うだけの若者が供給されていないということなのであろう。そのため、企業のみならず、公務関係の諸団体も学生たちの獲得のために並々ならぬ努力をしている。就職氷河期世代からすれば、あの時代はなんだったのか、そして、今、なぜこうなのかとの忸怩たる思いに違いない。
過日、本学で緑丘企業等セミナーなるイベントが2日間にわたり開催された(企業「等」というのは、役所を含む公的団体も参加するため)。参加した学生157名に対し、企業等は180社と、すでに売り手市場である。仕組みは企業等が30秒以内で自己アピールをした後、企業等ごとのブースを設置した体育館に移動し、そこに企業等の自己アピールを聞いて関心を持った学生たちが訪れるというものである。
驚くことに学生157名のうち、半数以上の79名が1年生(24名)と2年生(55名)であった。大学へ入学してまだ半年、ついこの間まで高校生だった学生たちがリクルートスーツを着て、かしこまって座っている。これを見て、今どきの若者は将来を見据えてしっかりしていると頼もしく考えるか、あるいは、大学の卒業証書が就職のためのパスポートと化したかと嘆くか。これは大学という存在を各自がどのように自分の中で位置づけているかにより判断が異なる。
もっとも、大学生が早いうちからこのような就活をするのは、そうさせる雰囲気がこの世の中に漂っているからでもある。就活支援をビジネスにする企業もあり、多くの情報がネット上にあふれ、学生になにか就活をせねばと焦らせる。ちなみに緑丘企業等セミナーも本学ではなく、業者が企画、手配したものである。
早期の就活が学業を阻害するとして(本音は青田買い防止のため)、かつては経団連が就職協定を定めていた。現在、これは廃止され、代わって、政府が企業に向けて「就職・採用活動に関する要請」を発出している。当然、本学で行われる上記セミナーもこれを逸脱はしていないが、企業等がこの要請に従っているかは定かではない。
手前味噌ではあるが、本学は就職率が高く、かつ、名の知れた企業へ多くの学生を送り出している。それに甘んじて、少なくとも3年生の秋頃までは学業、部活・サークル、旅行、あるいは、(あまり期待できないが)読書などの大学生らしいことに時間を使ってほしいと思うけれども、そうは絶対ならない。学生もまた好条件の企業等の競争率は高いことを十分に知っていて、その競争を勝ち抜くためには希望する企業の情報を入手し、効果的な就活をするために早め早めの行動に出ざるを得ないのである。
昨今、大学界では「教育の質向上」なるものが叫ばれている。大学が大衆化した今、難しことを難しくしか言わない授業は認められない(実際はないわけではないが)。学生をちゃんと教育して世に出せよと上から言われる。けれども、大学生活の最終目的が希望する企業からの内定獲得である学生たちにとっては、しばしば授業の質より単位を取得しやすいかどうかが重要な関心事である。これは教員にとっても都合がいいこともある。「教育の質向上」は容易ではない。
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