時流
共生社会の基礎となるもの
北海道大学名誉教授 前沢政次
介護予防は効果をあげているのに、男性の健康寿命が短いと嘆く町があり、その原因を探っている。
まずは健康に関する考え方である。健康寿命重視は果たして現代社会に適切であろうか。共生社会をめざす場合には、病気や障がいを持った人も、それぞれの生き方が尊重されなければならない。健康は手段であって、目的とすることには抵抗を感じる。
男性の健康寿命が短いのはなぜか。「太く短く生きる」との考え方があるかもしれない。自分の健康よりも家族を守るために身を粉にして稼ぐ。体調が悪くてもなかなか医者にかからない。俺は妻より先に逝きたい。
病院では最近次のような患者さんに出会った。震災後の対応で過労、燃え尽き寸前で仕事を早期退職し、その後お酒で体を悪くし、治療が難しい状態の方。軽い身体の障がいがあり、長年一人暮らし。住まいはごみ屋敷、ときどきお店などで倒れても医療機関への搬送拒否。いよいよ動けなくなって入院。若いのに脳梗塞。その原因は、家族が離れていき高血圧管理がうまくいかなかったため。こうした方々の病根は?
これらの方々は近隣に親戚がいても付き合いがない。旧友宅にも顔を出さない。多くの人が家に引きこもり、ときどきコンビニに行くだけになってしまう。唯一の親しい友人がアルコールとなる。やがて・・・
肝臓を悪くしたり、脳血管障害になったり、末梢神経や筋肉の障害が出て、病院に連れてこられる。
早期に命を落とされる場合もあるし、何とか回復して自宅へ退院する場合もある。しかし、その後の生活はどうであろうか。
これらの方々が、地域で孤立しないためにはどうすればよいのだろう。地域に住む方々は村八分とはしないまでも「近所の変わり者」としてレッテルを貼ってしまうことも少なくない。
アルコールが唯一の友人である人にもそれぞれの事情がある。自己責任と片付けてしまうことを避けなければならない。遺伝的な問題が原因となることもある。生まれつきの病気や障がいを持つこともある。経済的な状況もある、家族のきずなに左右されることもある。
近所で暮らすことが大変そうな人がいたら、病院の地域連携相談室か患者サポートセンターでもよい。地域包括支援センターでもよい。社会福祉協議会や介護保険施設でもよい。声をかけていただけると専門職が訪問する。容易には受け入れてもらえないであろうが、専門職も訓練し、工夫して訪問を繰り返す。孤立した人のおせっかいな友人をめざす努力が求められる。
「孤独」「孤立」が人間の健康をむしばむことが、多くの先進国で取り上げられている。
「近隣に暮らすさみしい人の居場所とつながりを思いやれる人」として生きる。この町に住んでいてよかったと言われる町にするために、ゆるやかなつながりが今強く求められている。
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