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時流

再起を支援できるか

小樽商科大学 商学部企業法学科教授 片桐由喜

 出張で授業を休講にしなければならない日があった。近年は授業管理が厳格になり、休講するなら補講をするか、あるいは、オンデマンド授業などを実施しなければならない。オンデマンド授業とは授業内容を録音・録画し学生に視聴させるものである。かつては考えもつかなかった授業の実践方法である。これを大いに発展させたのが新型コロナウイルス感染による学校閉鎖であった。学生たちは自宅でパソコンを起動し、プチっとクリックして教員の話を聞くのである。
 私は先日、動画を見てその感想を書く課題を出し、これを授業に代えた。その動画とは北海道文化放送(UHB)と日本財団が共同製作したWEBドキュメンタリー『灯りのようなものが、たしかに~ある出所者と雇った人たちの七つの物語~』である。UHBホームページではこの制作意図を「令和6年版『犯罪白書』によりますと、日本の再犯率は2023年で47%と高い水準にあります。そのうち7割は無職であり、社会とのつながりを失い、孤立の中で再び罪に手を染めてしまう人々が後を絶ちません。このシリーズでは、こうした社会の現状に一石を投じるべく、出所者に就労や住居、仲間づくりの機会を提供し、再犯率の低下を目指す日本財団職親プロジェクトの協力のもと制作されました。」と語る。この動画は現在もユーチューブで配信中である。
 職親は知的障害者福祉法16条1項3号に定めが置かれている(「知的障害者を自己の下に預かり、その更生に必要な指導訓練を行うことを希望する者であって、市町村長が適当と認めるもの」)。ただし、このドキュメンタリーでいう職親とは上記職親とは異なり、刑務所出所者・少年院出院者を積極的に雇用する事業主を指す。
 学生たちの周囲に出所者・・・ はおそらくおらず、いわば、このドキュメンタリーの内容は未知の世界であろう。そのこともあり、学生の感想文をとても興味深く読んだ。彼らは出所後も差別と偏見にさらされがちな出所者が、それでも懸命に働く姿を見て、それを「えらい」といい、世間が彼らを偏見の目で見ずに、再起を支援することが重要であると、感想文を結ぶ。
 ただし、学生たちがより関心を持つのが、職親たちであった。出所者を雇うことができるなんて、心が広い、優しい、立派だと賞賛の嵐である。この感想から学生たちが出所者を雇う雇用主が少ないこと、出所者を雇用することがどれほど困難なことであるかを理解していることがわかる。そのような困難を排し、積極的に出所者を雇用しているから、「誰でもできることではない」「すごい」という言葉が出る。
 では、あなたたちが将来、働く職場の同僚に出所者がいたらどうか、将来、社長になったら出所者を積極的に雇用するかと聞くと、即答に窮する。出所者を雇用するドキュメンタリーの中の企業やその社長たちを尊敬、敬服するが、わが身に置き換えることができるかとの問いにはしばし考えるのである。つまり、出所者再起支援「総論賛成、各論・・・・・」なのである。これは学生に限らず、私たち大人だって同じようなあり様であろう。
 現在、詐欺や強盗などの犯罪に加担する若者が逮捕起訴されるという報道にしばしば接する。相当数が刑務所に入るだろうし、そうなると数年後には出所者・・・ となって社会に戻ってくる。その時、私たちが差別、偏見なく受け入れることができるだろうか。出所者再起支援総論賛成、各論もちろん賛成といえるだろうか。自問するも、模範解答のような言葉を軽々にいえない。読者諸氏には上記ドキュメンタリーの視聴をおすすめしたい。個々の事例を知るだけで意味がある動画である。

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