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第29回 北海道国保地域医療学会

 北海道国民健康保険診療施設連絡協議会と本会主催の第29回北海道国保地域医療学会が7月18日、ホテルポールスター札幌で開かれた。今回のメインテーマは「地域包括ケアと地域医療構想」。福岡国際医療福祉大学学長・ヘルスサービスリサーチセンター所長の松田晋哉氏が特別講演を行ったほか、5題の研究発表と1題のポスター掲示、シンポジウムを通じ、道内各地から集まった国保診療施設関係者や市町村国保関係者等が、北海道の地域医療の将来像について研鑽を深めた。
 開会にあたり、主催者を代表して北海道国民健康保険診療施設連絡協議会会長の村上英之氏(足寄町国民健康保険病院院長)があいさつし、人口減少と高齢化が進む中、北海道でも地域医療の存続が危ぶまれていると指摘。「医療、介護、福祉、行政など多職種が参加し、地域のさまざまな問題について語り合い、学ぶ場」と本学会の意義を説明した。新型コロナウイルス感染症の流行や少子高齢化、人口減少の加速により、地域包括ケアシステムは「構築する」段階から「どう存続させるか」を考える段階に移っており、新たな地域医療の形を考える時期を迎えていると述べた。来賓として、北海道保健福祉部健康安全局国保担当局長の笠井浩氏、北海道国民健康保険診療施設開設者協議会会長の硲一寿氏がそれぞれ祝辞を述べた。

 特別講演では松田晋哉氏が、少子高齢化によって急性期医療の需要が変化する一方、医療と介護の複合的なニーズを抱える高齢者が増えていることをデータで解説。介護や在宅の現場で高齢者の状態変化を早期に把握し、医療につなぐ「前方連携」の重要性や、高齢者の低栄養、地域の特性に応じた病院機能のあり方などについて語った。
 ポスター発表では、気象変動と心不全入院の関連、糖尿病治療薬を服用する患者の膀胱がんの早期発見、過疎地域における看取り支援、在宅療養を支えた医療処置など5題が報告されたほか、重症救急医療事例を通じて地域病院の役割を考えるポスターが掲示された。
 最後に行われたシンポジウムでは、北海道保健福祉部地域医療推進局地域医療課課長の佐々木隆行氏、社会福祉法人北海道社会事業協会富良野病院名誉院長で地域医療連携推進法人ふらのメディカルアライアンスの角谷不二雄氏、医療法人みなとクリニック副院長の横山豊氏、株式会社フェアネス「Support nurseフェアネス」代表取締役の大山尚美氏が、それぞれの立場から地域包括ケアと地域医療構想について発表。松田氏の助言や会場との質疑応答を通じて議論を深めた。

(以下、特別講演とシンポジウムの発表要旨、ポスター発表の発表者とテーマを掲載)

特別講演

変化する医療需要  

 私が大学を卒業した頃と現在では、医療を取り巻く環境は大きく変化している。最も大きな変化は少子高齢化だ。団塊の世代が前期高齢者になるまでは、心筋梗塞や初発の脳卒中など典型的な急性期医療のニーズが多くあったが、現在はこうした患者が減少している。専門医制度のもとでは所定数の症例を経験する必要があるため、患者の医療へのアクセスを保障しながら、医療機能の集約化を進めなければならない。
 特に北海道は日本の食料基地である。農業、畜産業、酪農、漁業に携わる人たちが安心して暮らせる環境を守ることは、日本の食料確保にも直結する。厚生労働省や総務省だけでなく、農林水産省も含めた横断的な視点で広域の医療を守る必要がある。一方、医療、介護、福祉、住宅政策を一体的に進めるのは、日常生活圏域である市町村だ。それぞれの地域が実情に応じて考えなければならない。

医療・介護の複合化と「前方連携」

 医療と介護のニーズが複合化していることは、データからも明らかだ。ある県で、急性期病院に入院した65歳以上の患者について、入院の半年前から退院1年後までのサービス利用を追跡したところ、脳梗塞では約3割、誤嚥性肺炎では約75%が、入院の半年前から介護保険を利用していた。
 脳梗塞や股関節骨折の患者は、リハビリテーションを軸とした後方連携によって回復期病床へ移る。一方、心不全や肺炎、誤嚥性肺炎、尿路感染症では、回復期病床に移る患者は1%未満で、急性期病院と介護施設や在宅の間を直接行き来している。同じ患者が糖尿病、高血圧、心房細動、認知症など複数のリスクを抱え、病名を変えながら何度も入院している。
 こうした高齢者の状態悪化には予兆がある。介護や在宅の現場で変化を早めに把握して医療機関につなげば、外来で治療を終えたり、入院期間を短くしたりできる。後方連携に加え、状態が悪化する前に医療につなぐ「前方連携」を進めることが、地域包括ケアの基本となる。また、多様な疾患を抱える高齢者を幅広く診る総合診療医を、地方でどのように確保するかも重要である。

高齢者救急と低栄養への対応

 一方、高齢者の入院理由も変化している。北海道の75歳以上のデータを見ると、介護施設からの入院は誤嚥性肺炎、骨折、心不全、尿路感染症、肺炎、脳梗塞などが多く、上位10疾患で約半数を占める。その多くには予兆がある。今後、75歳未満の救急搬送は減少する一方、85歳以上は2倍以上に増えると見込まれる。高齢者救急の多くは外来で対応できる一次救急であり、早い段階で対応する仕組みが必要だ。
 低栄養も重要な課題だ。北海道では入院患者の4分の1、誤嚥性肺炎や尿路感染症などでは約4割が低栄養の状態で入院し、十分に改善されないまま退院している。低栄養では感染症に弱くなり、リハビリテーションの効果も上がらない。これまでの栄養指導は過剰なカロリーや塩分を控えることに偏りがちだったが、特に85歳以上の高齢者には、まずしっかり食べてもらうことが大切である。
 ヨーロッパには、高齢者施設のレストランを地域に開放し、高齢者が1日に一度は栄養士の作った食事を囲めるようにしている例がある。病院や介護施設には食事や交流など、高齢者の生活に必要な機能がそろっている。足寄町国民健康保険病院の待合室に、バスを利用する高齢者が自然に集まっていたように、病院や介護施設を地域包括ケアの実践の場として活用する発想が必要である。

地域の実情に応じた病院の役割

 新たな地域医療構想では、広域で急性期機能を担う「タイプA」の病院と、介護施設や診療所と連携して地域を支える「タイプB」の病院の役割を整理し、各病院が自らの機能を選択することがポイントになる。地域のニーズが変化する中、病院はデータに基づいて求められる役割を考える必要がある。
 名寄市立総合病院と士別市立病院は、急性期を名寄、慢性期を士別が担う連携を進めた。士別市立病院は急性期志向から転換したことで病床稼働率や経営が改善し、士別の患者が住み慣れた地域で最期を迎えられるようになった。医療者が考える「急性期」と、住民が期待する肺炎や尿路感染症などへの対応には違いがある。病院の役割を変える際には、データを示しながら住民へ丁寧に説明することも欠かせない。
 札幌医療圏では、今後85歳以上、特に単身の高齢女性が大幅に増える。SCRを見ると、療養病床、訪問診療、訪問看護、サ高住など、すでに複数の資源を活用して高齢者を支えている。しかし、病床や介護施設をこれ以上大幅に増やすことは難しく、増加する要介護高齢者に対応するには、訪問診療をさらに拡充する必要がある。そのためには、在宅患者の急変時に往診する医師や緊急入院を受け入れる病院を確保し、訪問診療を支えるタイプB病院と診療所のネットワークを構築することが喫緊の課題である。

函館を核とした道南圏の広域連携

 前方連携には、患者の状態変化を早期に把握し、必要な情報を速やかに共有するネットワークが欠かせない。函館では、医療・介護の多職種が、受け入れる側に必要な情報を検討し、共通の「函館医療・介護連携サマリー」を作成した。ID-Linkを通じて即時に共有でき、担当のケアマネジャーが分からず対応が遅れるといった問題も防げる。フォーマットがすでに整っており、北海道の標準として広げてもよい仕組みである。
 南渡島医療圏では、人口が減少する一方、当面は介護需要が増加する。若い女性の流出は少子化を加速させるだけでなく、医療・介護分野の担い手確保も難しくするため、地域に残りたいと思えるまちづくりも重要である。介護施設や病床が慢性期の高齢者を支えているが、訪問診療、訪問看護、訪問介護などの在宅サービスは少ない。外来機能を訪問診療につなげるとともに、余剰となる一般病床を慢性期の患者を支える機能へ転換する発想が必要である。松前町立松前病院と木古内町国民健康保険病院では、肺炎、尿路感染症、心不全、誤嚥性肺炎、骨折など、高齢者に多い疾患を数多く診ており、総合診療の役割が重要となる。
 北渡島檜山医療圏では、入院、外来、介護需要のいずれも減少し、新たな医療機関や訪問看護・介護事業所の参入も期待しにくい。今ある病院、療養病床、介護施設を維持し、病院からの訪問診療や介護施設のショートステイを組み合わせて在宅生活を支えることが現実的である。圏域の広さを考えれば、八雲総合病院の機能を維持するとともに、せたな町立国保病院や今金町国保病院が総合診療を担えるよう、大学等から内科医を派遣する必要がある。移動診療車とオンライン診療を組み合わせた医療MaaSの活用も考えられる。

医療・介護・住まいをつなぐ

 余った病床を単に閉じるのではなく、地域に必要な機能へ転換した事例もある。釧路協立病院は一病棟を看護小規模多機能型居宅介護に転換し、通い、泊まり、訪問と医療を組み合わせることで、医療と介護の間にいる患者を受け止める場をつくった。
 奈井江町立国民健康保険病院では、3階の一般病棟を廃止し、サービス付き高齢者向け住宅に転換した。砂川や滝川の急性期病院で治療を受けた後、すぐには自宅へ戻れない高齢者を一時的に受け入れ、訪問看護を入れながら在宅生活へつないでいる。急性期病院と自宅の間をつなぐ、医療、介護、生活の「バッファー」となる仕組みである。
 足寄町の高齢者等複合施設「むすびれっじ」は、生活支援長屋、グループホーム、地域交流施設などを組み合わせた住まいである。がん末期の単身高齢者や、町外から来た足寄高校の生徒も暮らしている。若者が日常的に高齢者や介護に触れることで、将来、医療や介護を志す人材が生まれる可能性もある。医療、介護、住まいを一体的につくる発想が重要だ。

地域を人材育成の場に

 過疎であることはデメリットばかりではない。清水赤十字病院は、当時、北海道で唯一「在宅・慢性期領域パッケージ」の研修を受けられる病院であり、全国から医師や看護師が訪れていた。全国の医局とも連携し、若手医師を1~3カ月の地域医療研修として受け入れている。若手医師は外来、入院、訪問診療を通じて一人の患者を総合的に診る経験を積み、滞在中は地域医療の担い手にもなる。総合診療の学びの場をつくることで、全国から人材を集める仕組みである。
 訪問介護の担い手不足に対し、青森ではリンゴ農家の女性らを短時間の入浴介助に必要な人材として育成した例がある。フルタイムで働く人だけを探すのではなく、地域にいる人の空き時間や副業を生かす発想も必要だ。
 今後、大学病院には医師派遣と総合診療の役割が一層求められる。筑波大学、富山大学、佐賀大学に共通するのは、大学病院の外に総合医を育てる場を設けていることである。筑波大学は地域の町立病院などへ医師を派遣し、大学が作成したカリキュラムに基づいて研修を行う。佐賀大学は民間病院内に総合診療科の拠点を置き、地域全体を教育の場としている。北海道でも、国保病院・診療所と道内3大学がカリキュラムを共有し、総合診療医を育て、地域へ循環させる仕組みをつくることができる。将来的には看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職などの育成にも広げる必要がある。
 北海道には、地域医療や介護の優れた取り組みが数多くある。しかし、それぞれが「点」にとどまり、十分に共有されていない。各地の工夫を「面」としてつなぎ、大学と国保医療機関が協力して北海道のモデルとして発信することが重要である。
 

ポスター発表

シンポジウム

新たな地域医療構想の策定に向けて
北海道保健福祉部地域医療推進局地域医療課 課長 佐々木 隆行 氏
 北海道では人口減少が推計を上回るペースで進み、地域によって人口動態にも大きな違いがある。札幌圏では生産年齢人口が減少する一方、85歳以上人口が増えるが、南檜山や北空知などでは、生産年齢人口と高齢者人口の両方が急速に減少する。医療従事者の不足も今後さらに深刻になると見込まれている。
 北海道は、第2次医療圏(北海道を21に分けた圏域)のうち多くが非常に広い面積を有している。人口規模だけで新たな構想区域や急性期拠点を設定すると、地域の医療を維持できない可能性がある。北海道の広域性や移動距離、所要時間といった地域特性を踏まえて検討しなければならない。
 現行の地域医療構想では、北海道の病床数は国が示した必要病床数に近づいている。しかし、医療機関の機能再編が進んだ結果というより、人口減少や医療従事者不足によって病床を維持できなくなった面がある。岩見沢市立総合病院と北海道中央労災病院の経営統合、名寄市立総合病院と士別市立病院の役割分担など、地域の実情に応じた再編も始まっている。
 病床機能報告上の病床数は、2016年の約8万1000床から2024年には約7万3000床となり、2025年の必要病床数と同程度の水準になった。全国では、機能別に見ると急性期と慢性期が減少し、回復期が増えている。ただ、数だけを必要量に合わせればよいのではなく、地域の医療需要に対応できるよう、機能のバランスを整えることが課題である。
 北海道の第2次医療圏は、面積が全国で最も広い15圏域のうち12圏域を占める。新たな地域医療構想では、急性期拠点機能を人口20万~30万人に1カ所とする考え方が示されているが、北海道で人口20万人以上を維持する医療圏は限られる。移動距離や所要時間、地域で担っている医療機能を見ながら、拠点のあり方を考える必要がある。
 2040年に向けて、北海道の全21圏域で85歳以上人口が増える。新たな地域医療構想は入院医療だけでなく、外来、在宅医療、介護との連携、人材確保なども対象となる。道では、北海道在宅医療推進支援センターを通じて地域への助言や先進事例の共有を進めながら、北海道の実情に合った医療提供体制を検討していく。
地域との連携で医療圏を守りたい
地域医療連携推進法人ふらのメディカルアライアンス 代表理事              
北海道社会事業協会富良野病院 名誉院長              
旭川医科大学地域共生医育センター 客員講師 角谷 不二雄 氏

 富良野医療圏は人口約3万6000人の小さな医療圏である。富良野協会病院は圏域で唯一の総合病院として、救急、産科、小児科など採算を確保しにくい医療も担っている。一方、人口当たりの医師数や看護師数は道内でも少なく、医療従事者の確保が大きな課題となっている。
 地域の限られた医療・介護資源を有効に活用するため、2024年3月、地域医療連携推進法人「ふらのメディカルアライアンス」が認可された。富良野協会病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、診療所、特別養護老人ホームなどが参加している。法人は北海道社会事業協会、富良野市、中富良野町の3社員と、それぞれが運営する6つの医療機関で構成されている。効率的な医療従事者の勤務体制をつくり、地域に必要な医療・介護の供給を維持することを目的としている。
 中富良野町立病院の無床診療所化によって余裕が生じた看護師を、富良野協会病院や介護老人保健施設、訪問看護ステーションに配置転換し、休止していた地域包括ケア病棟を再開することができた。訪問看護ステーションも病院内に移転し、医療スタッフとの連携が進んでいる。
 富良野協会病院では、コロナ禍以降、入院患者の減少や医療従事者不足によって厳しい経営が続いた。病院の経営状況を市議会や新聞を通じて地域に伝えるとともに、救急医療を守るため、2025年にはクラウドファンディングを実施した。その結果、目標額を大きく上回る支援が寄せられた。自治体からの財政支援も受け、地域に必要な病院を地域全体で支える動きにつながっている。連携推進法人には、病床の再編や人材配置、研修、設備の共同利用、医薬品・物品の共同購入など、さらに活用できる仕組みがある。
 旭川医科大学との連携では、医師養成確保修学資金の貸し付けを受けた医師が富良野協会病院で勤務しているほか、大学、病院、メディカルアライアンスによる協定を結び、地域医療教育を進めている。自治体との協力も進む一方、設備の共同利用や医薬品・物品の共同購入などはまだ十分ではない。参加する医療・介護機関を増やし、旭川の急性期拠点病院との役割分担を検討しながら、圏域全体で医療を支えることが今後の課題である。
在宅医療空白地域での体制構築と多職種連携―紋別市での取り組み―
医療法人みなとクリニック 副院長 横山 豊 氏

 2014年に地域医療構想が策定された際、遠紋地域では病床の機能的再編によって約400床が減少し、それに伴い400人以上の患者を在宅医療で支える必要があると推計された。しかし、当時の遠紋地域には在宅療養支援診療所・病院が一つもなかった。その後も医療従事者や介護従事者の不足によって病床を維持できず、この10年間に実際に約150床が減少した。みなとクリニックも58床を有していたが、スタッフ不足から実際に入院を受け入れられるのは約28人となり、病棟の維持が困難になった。そこで病床を返上し、在宅医療へ軸足を移した。
 しかし、医師一人で24時間の在宅医療を担うことはできない。2024年度の紋別市在宅医療推進事業を担うことになり、地域医療の課題解決を支援する医療・介護の専門職集団「KISA2隊」に、在宅医療の仕組みづくりと人的支援を依頼。2024年6月から24時間365日体制の在宅医療を開始した。訪問看護ステーションとの連携に加え、京都の吉木往診クリニックを参考に、医療行為以外の業務を担うメディカルコーディネーターを導入した。現在は3人のメディカルコーディネーターが、訪問前の体調確認、運転、カルテの代行入力、処方箋やレセプトの作成などを担っている。道外の医師にも定期的に来てもらい、5年間で地域が自走できる仕組みをつくる計画である。
 多職種間の情報共有には、スマートフォンなどから写真や動画も共有できるICTツールのMCSを活用している。緊急性の高い連絡には電話、急を要しない経過やACP(人生会議)の内容などはMCSと使い分けている。心不全患者の体重や血圧、服薬状況を多職種で共有することで、心不全の増悪による入院はほぼ見られなくなった。2022年12月の停電で電話がつながりにくくなった際にも、患者の状況確認に役立った。道具を入れるだけでなく、顔の見える関係を築き、共有方法を決めておくことが重要である。感染対策や一次救命処置の研修、薬局、訪問歯科との連携も進め、入院と在宅のどちらかを一律に勧めるのではなく、在宅で過ごしたい人が選択できる環境を整え、オホーツク全体の連携につなげたいと考えている。
これからの地域医療構想
地域生活の継続を支える訪問介護と保険外支援の実践
株式会社フェアネス Support nurseフェアネス 代表取締役 大山 尚美 氏

 高齢化や人口減少、家族の介護力の低下、医療・介護専門職の不足が進む中、公的サービスだけでは生活のすべてを支えることができない場面がある。本人が住み慣れた地域で暮らし続けたいと望んでいても、家族だけでは支えきれず、在宅生活を断念するケースもある。
 私は看護師として病院、介護施設、訪問看護で患者や家族と関わる中で、「行きたいけれど行けない」「帰りたいけれど帰れない」「支えたいけれど支えきれない」という声を聞いてきた。そこで、まず看護師による保険外サービスを始めた。さらに、費用面から保険外サービスを利用できない人にも必要な支援を継続的に届けるため、訪問介護事業所を開設した。
 保険外サービスでは、認知症のある方の買い物への同行、入院中の方のお墓参りや一時帰宅、車椅子を利用する方の旅行などを支援している。金婚式を迎えた夫婦が、東京で行われる孫の結婚式へ出席する支援も行った。他にも、入院中の人が孫の結婚式へ出席することを目標にしたことで、リハビリテーションへの意欲が高まり、当日には、それまで難しかった言葉が出るようになった事例がある。
 病気や障がいがあっても、事前にリスクを確認し、移動方法や体調管理、現地で受診できる医療機関などを調整すれば、本人が望む外出や旅行を実現できる場合がある。本人だけでなく、家族にとっても大切な時間となり、その後の生活やリハビリテーションへの意欲につながる。
 訪問介護では、看護師もヘルパーとして利用者の生活に関わる。食事が残っている、部屋の温度が高い、外出できていないといった小さな変化に気づき、ケアマネジャー、訪問看護、医療機関、家族と情報共有することで、重症化を防ぎ、地域生活の継続につなげている。現在は看護職2人と、ヘルパー資格と調理師免許を持つスタッフの3人体制である。
 医療・介護職と障害のある方が一緒に街を巡る「小樽バリアフリー観光」も実施している。実際に街を歩くことで、段差などの物理的な障壁だけでなく、困っている人への声の掛け方や、地域を見る視点も変わる。制度と生活の間にある課題を地域全体で支え、一人一人が望む暮らしを続けられるようにすることが大切である。
 保険外サービスは「贅沢なサービス」ではなく、地域で暮らし続けるための支援である。命を支えるだけでなく、その人が生きる理由を支える役割を担っていると考えている。

発言者への感想・助言

助言者
福岡国際医療福祉大学 学長 / ヘルスサービスリサーチセンター 所長 松田 晋哉 氏
 人口20万人に1カ所という急性期拠点の基準を厳密に当てはめるのではなく、各地域でどの病院が拠点機能を担うかを考える必要がある。それぞれの地域拠点を守り、大学との連携を築くことが重要だ。「待てる急性期」と「待てない急性期」を分け、がんの化学療法などは地域の拠点病院で行い、大学病院が専門医や薬剤師を派遣する仕組みも考えられる。
 富良野や紋別では、病院だけでなく、介護施設、診療所、歯科診療所、薬局なども加わる複合体の形が合理的である。医療と介護の両方の報酬制度に精通した事務職員は今後ますます不足する。生成AIも活用しながら、連携推進法人のバックオフィスで請求業務などを共通化する仕組みが必要である。
 介護保険は本来、公的なサービスと保険外サービスを組み合わせながら、本人の生活目標を実現するために設計された。ケアプランも、まず「どのように暮らしたいか」という目標を立て、そのために必要なサービスを組み合わせるものである。大山氏の取り組みは、本来のケアマネジメントに近いものだと考える。
司会者
北海道国民健康保険診療施設連絡協議会 会長
足寄町国民健康保険病院 院長 村上 英之 氏

 地域包括ケアを進めるうえで、人材不足や医療機関・介護施設の減少が大きな課題となっている。その中で、限られた人材や施設をネットワークによって補い合う富良野の取り組みや、各地から知恵を得ながら在宅医療の体制を築いた紋別の取り組みは、大いに参考になる。また、大山氏の保険外サービスの実践から、医療の目的は、患者をただ長生きさせることだけではなく、その人が人生においてどのようなウェルビーイングを実現するかを考えることにある。今回の発表を通じて、その原点を改めて確認することができた。

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事業部事業推進課

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